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海外には「障がいのある子の存在を隠す国も…」 パラ競技の女性活躍、簡単ではない世界の実情

競泳の元五輪代表選手で、引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として発展途上国の平和構築・教育支援に従事し、2021年から一般社団法人「SDGs in Sports」代表としてスポーツ界の多様性やSDGs推進の活動をしている井本直歩子さんの「スポーツとジェンダー」をテーマとした「THE ANSWER」の対談連載。毎回、スポーツ界のリーダー、選手、指導者、専門家らを迎え、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第5回のゲストは日本パラリンピック委員会の河合純一委員長。競泳選手としてパラリンピック6大会で金メダル5個を含む計21個のメダルを獲得した同氏と全3回で議論する。今回は前編。(取材・構成=長島 恭子)

競泳アトランタ五輪代表・井本直歩子さんと日本パラ委員会・河合純一委員長【写真:中戸川知世】
競泳アトランタ五輪代表・井本直歩子さんと日本パラ委員会・河合純一委員長【写真:中戸川知世】

連載第5回「競泳アトランタ五輪代表・井本直歩子×日本パラ委員会・河合純一」前編

 競泳の元五輪代表選手で、引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として発展途上国の平和構築・教育支援に従事し、2021年から一般社団法人「SDGs in Sports」代表としてスポーツ界の多様性やSDGs推進の活動をしている井本直歩子さんの「スポーツとジェンダー」をテーマとした「THE ANSWER」の対談連載。毎回、スポーツ界のリーダー、選手、指導者、専門家らを迎え、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第5回のゲストは日本パラリンピック委員会の河合純一委員長。競泳選手としてパラリンピック6大会で金メダル5個を含む計21個のメダルを獲得した同氏と全3回で議論する。今回は前編。(取材・構成=長島 恭子)

 ◇ ◇ ◇

井本「これまで、スポーツ界のジェンダー平等の話というと、オリンピック競技のことばかりが話題になることが多いんですが、パラリンピック競技でも非常にしっかりと取り組まれていることを知って、ぜひお話を伺ってみたいと思っていました」

河合「僕もお話しするのを楽しみにしていました」

井本「まず、パラの出場選手なんですが、東京2020パラリンピック大会でほぼ半数(男性60%、女性40%)になりました。女性選手の数が急激に増えましたよね?」

河合「はい。歴史的に、パラ競技は女性選手の割合が低く、20~30年前まで女性の割合が3割程度でした。ですから、やっと増えてきた、という状況です。今、パラの実施競技のうち、女性選手が出場する割合は約40%ですが、まず、障がいがあり、女性であるというだけで、スポーツを行う人の数は限られます。開発途上国を筆頭に、障がいのあるの女性が競技スポーツや国際大会へ参加することが難しい国はまだまだたくさんあります」

井本「パラ競技は用具や遠征費などの費用もかかりますからね。また国によっては、社会的なジェンダー格差も根強くあります」

河合「そうです。パラ競技を続けるには、資金の問題は非常に大きいですし、ジェンダーや障がい、経済格差の様々な苦しみや難しさは、足し算ではなく、掛け算で膨らみ、当人に降りかかります。そもそも、医療体制が整っていない国では、 障がいのある状態、特に重度障がいの方々は、生き残ることさえ難しい」

井本「特に開発途上国では今でも、障がいのある子が生まれることをタブー視し、親が子どもの存在を隠す国も多くあります」

河合「そういった社会では、障がいのある女性はインビジブル(見えない)な存在となり、義務教育とか、社会活動そのものにさえ、なかなか参加できません。ましてやスポーツとなると、もっと難しい。また、宗教的・民族的な背景から、障がいのない方々であっても女性がスポーツに参加できない国もあります。そう考えると、本当に簡単ではありませんよね」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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