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陸上界にいまだ残る「不適切な鉄剤注射」 重い貧血に悩んだマラソン有森裕子の警鐘

安易に頼った鉄剤注射「足に羽が生えたかの如く、軽くなるんです」

 病院に行き、血液検査を受けると、有森さんのヘモグロビン値は「6」。これは正常値の半分の値で、普通であれば立っていられないほどの状態だという。

「それでもパタンと倒れる、か弱さはないんですが(笑)、鉄欠乏性貧血であることは明らかでした。食事だけで改善することは難しく、当初は鉄剤での治療を行っていました。

 でも、鉄剤ってものすごく胃に負担がかかるんですね。少しでも空腹の状態で飲むと、夜中に目が覚めるくらいの胃痙攣を起こす。しかも、私の場合、体質的に鉄が吸収しにくいとわかり、途中から鉄剤注射も打つことになりました。

 鉄剤注射を打つと、もう、どこまでも走れるよ! とうれしくなるくらい、足に羽が生えたかの如く、軽くなるんですね。だからみんな、安易に頼るのだと思います」

 治療は功を奏し、ヘモグロビン値は徐々に上がった。しかし、夏になると無茶な減量を3年間くり返し、そのたびに貧血を起こした。その原因は、問題の根本を理解していなかったからだ、と話す。

「鉄剤を飲めば体調はよくなる。しかし、数値がよくなった後、どう過ごせばよいのか、また、悪くなる原因もわかっていなかった。そのため、やっぱり夏になれば極端な減量をするし、そのしわ寄せが秋にきていました」

 都道府県を代表する女子長距離選手が一同に会する、全国都道府県女子駅伝。この大会がスタートしたのは、有森さんが高校1年生のときだった。有森さんは、1年時から、岡山県の強化メンバーに選抜されたが、3年間、補欠のまま終わった。それも、今となっては無理な減量の影響だとわかる。

「秋口一発は、身体が軽くて走れます。でも、強化に入る頃から調子が悪くなり、現地でのタイムトライアルでもよい結果が出ない。3回目の正直、と臨んだ3年時に選ばれなかったときは、やっぱりつらかった」

 高校3年間で、鉄剤の威力とヘモグロビン値が下がることの怖さを知った。速く走れる、走れないではなく、身体が正常でないことの怖さを知り、身体への関心が高まった。

「高校3年間、栄養士の免許を持っていた母がずいぶん、食事の内容も考えてくれました。そのおかげで、鉄分の吸収を妨げる食材を一緒に摂らないなど、組み合わせを考えて食べるようになり、貧血も改善。正常値になり、以来、鉄剤注射は打っていません。この経験は、体重の減らし方もちゃんと考えなければいけないと、考えるきっかけになりました」

 高校卒業後、有森さんは体育の教員になる目標を持って、日本体育大学に入学。自分の身体への関心がより一層強くなった。

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)、『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』(岡田隆著、以上サンマーク出版)、『走りがグンと軽くなる 金哲彦のランニング・メソッド完全版』(金哲彦著、高橋書店)など。

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