「8強入りは十分可能」― 前回W杯の“影のリーダー”廣瀬俊朗が語る4年前との違い
エディー流とジョセフ流の違いとは
エディー・ジャパンでは、シェイプと呼ばれるいくつかの攻撃パターンを用意して、試合の中で攻撃の起点であるSH、SOらが、どのシェイプを使うのかを選択、判断するスタイルで戦った。ボールポゼッション(保持)時間を増やすために、パスでボールを持ち続けるのが原則だった。だが、オーストラリア出身のジョーンズHCから、ニュージーランド生まれのジョセフHCに指揮官が代わったことで、ラグビースタイルも一新。日本ラグビーの特徴でもあるボールを積極的に動かすスタイルは同じだが、状況に応じてキックも使い、相手の攻守の陣形をカオス(混沌)状態にして戦うのがジョセフ流だ。
型にはめ込んだ戦術でチームの完成度を高めたエディー・ジャパンのラグビーとの違いを、廣瀬氏は「自由」と指摘したのだが、ここにジェイミー・ジャパンの魅力と難しさが同居している。選手個々の役割分担が綿密に決められ、状況に応じて、選手間で指示を出し合い、攻撃の方向性を選択していく。選手の判断力が重要になるため、個人の能力が試されることになる。その一方で、決められた役割を遂行できなければ、日本チームの強みでもある組織としての機能は破綻する。
日本代表の進化を認める廣瀬氏だが、チームに足りないものも指摘する。
「去年の試合をみると、アタックの部分はよくなってます。でも、NZ戦は簡単に取られてしまうトライが多すぎた。テストマッチレベルではなかったですね。イングランド戦では修正できた部分もあったが、後半のレフェリングに対するマネジメントに課題が残りました。逆転勝ちしたロシア戦は、開幕戦へのいいシミュレーションだった一方で、ワールドカップでの戦いを考えると、もうちょっと早い時間帯に立て直してほしかった」
得点力の高さと防御の弱さ――。これがジェイミー・ジャパンのキャラクターとなっているが、通常のテストマッチ以上に、各国が勝利にこだわるワールドカップでは、ロースコアの接戦になる可能性も想定する必要がある。そのために、防御力が大きなキーポイントになることを、廣瀬氏は熟知しているのだ。
この防御の脆さにも、廣瀬氏は4年前の経験を踏まえて原因の1つを挙げている。
「チームとしての結束みたいなものが、いまどこまで高まっているのか気がかりです。サンウルブズ、ワールドカップトレーニングスコッドと、選手を2チームに分けてしまっているし、その2チーム間でも随時選手が入れ替わっている。4年前だと、ワールドカップを含めて年間168日一緒に過ごすことができた。そりゃ結束しますよね。だからこそ、これからメンバーが絞り込まれていく中で、いかに、本当のワンチームになれるかに期待したい」
ジェイミー・ジャパンのスローガンこそが、いみじくも“ワンチーム”だ。開幕まで100日を切ったいま、まさに、チームの根幹となるテーマが問われることになる。