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きっかけは5年前の“苦い記憶” 女子ラグビー元日本代表がフランス挑戦を決意した理由

大学のクラスメートとのカフェタイム。こんな時間も冨田が求めてきたものだ【写真:本人提供】
大学のクラスメートとのカフェタイム。こんな時間も冨田が求めてきたものだ【写真:本人提供】

きっかけは2017年W杯での痛恨の出来事

 慌ただしい日々を語った冨田だが、その苦笑に充実感が滲む。ドミトリーでの共同生活に、食事も時間やコストを考えると自炊がほとんど。今でも大学卒業後に入社したフジテレビ社員の肩書はあるが、物価なども考えると切り詰めた生活が当たり前だ。

「自分のお金を円からユーロに替えると、とんでもない(少)額になる。外食はめちゃ高いです。だから、部屋で親子丼とかフライドライスを作っていますよ」

 そんな生活を強いられても、敢えてフランスでの挑戦を選んだ。

「一番の決め手は、2017年ワールドカップ(アイルランド)です。初戦でフランスと対戦した時にレッドカードになったこと。それが自分の中でずっと頭に残っている。自分の記憶を上書きしたいなというところが一番大きいですね。だからフランスでプレーしたかった」

 痛恨の出来事は、夢舞台の後半28分に起きた。武器でもあるハードタックルを連発していた冨田だったが、それが仇となった。気合の入ったハードヒットを、頭部への危険なプレーと判断されての一発退場。その後の、決勝トーナメント進出をかけたプール戦残り2試合も出場停止に。チームもプール戦全敗で決勝トーナメント進出を逃し、最終順位も12チーム中11位に終わった。この大会のために数年間積み上げてきた努力と自己犠牲が、一瞬で終わったのだ。

 あの時、失われたものを取り返したい――。そんな思いが、冨田をフランス南部の田舎町へと向かわせた。そのポーで体感するフランス女子ラグビーの実情は、どんなものなのだろうか。現在、女子15人制フランス代表は世界ランキング3位(日本は13位)。男子に負けないラグビー強国だが、女子選手はどのよう環境で競技生活を続けているのか。

「基本的には選手はアマチュアで、私もプロ契約ではありません。フランス代表に入った選手が、協会とプロ契約をするのですが、私のチームのプロ選手は1人だけ。他にカナダ代表が2人いますが、契約としてはアマチュアです」

 多くの選手は、日本の女子選手と同じようにラグビー以外に仕事を持ち、アフターファイブと週末にラグビーに打ち込んでいる。土曜日に仕事がある選手も少なくない。冨田の印象では、ラグビーを続けるには日本同様に企業や職場の理解も必要だという。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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