ゲームコントロールに徹する司令塔像を追求

　川崎には何年も前からクローズアップされながら、解消されずにいる根深い課題がある。チームに関わるすべての者たちのコミュニケーション力だ。「ここに真摯に向き合う1年になると思う」と篠山は力を込める。

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「川崎の人たちって、コーチも含めてみんなすっごくいい人たちです。みんな優しいし、人の気持ちがよく分かって、気遣いができる人たち。だからこそ、空気感をぶっ壊せないと言いますか……」

　川崎はBリーグ屈指の設備環境を持つクラブだ。クラブハウスにはそれぞれに個室があてがわれ、未婚・既婚にかかわらず食堂で昼夕2食が提供される。しかし、休息中に1人きりになれ、毎日朝から晩まで顔を突き合わせられる環境が、コミュニケーションという点ではマイナスに働いたところもあるのではないかというのが篠山の見立てだ。

　加えて、ここ数年はコロナ禍で会食やアクティビティを用いたチームビルディングもままならなかった。今季はこういったことも積極的に取り組みつつ、日々の生活での意識を変えていきたいと篠山は話す。

　司令塔としてプレーする一選手としては、サンロッカーズ渋谷から加入した木下博之アシスタントコーチとともに、持ち味のゲームコントロール力を磨いている。

「相手の強み・弱みをしっかり活かして、『篠山が出るとボールがよく回る』みたいなところを体現したいです。木下さんからは1対1の駆け引きやスクリーンの使い方などの細かい技術を教えてもらっているので、そういったところを活かして去年よりペイントの中にアタックしたり、どんどんボールをプッシュする回数を増やして、ゲームをコントロールしてボールを散らすだけじゃない選手になりたいですし、今年はもっと直接的な数字を伸ばせるようになるんじゃないかと思います」

　世の流行と同様、バスケのトレンドも移り変わりが早い。平成の世に当たり前とされていた、ゲームコントロールに徹する司令塔像はオールドスクールなものとなり、ワールドカップで日本中を熱狂させた富樫勇樹（千葉ジェッツ）や河村勇輝（横浜ビー・コルセアーズ）のように、自らどんどん得点を狙えるガードが主流になりつつある。篠山はこのような現代バスケを自らに取り込みつつも、あくまでゲームコントロールにこだわりたいと考えている。

「東芝に加入した時からずっと、オフェンスでもディフェンスでもゲームをコントロールすることを求められてきました。それがいつしか自分の武器になって、日本代表まで行くという経験をさせてもらっているので、まあ、やっぱりそこなんだろうなって。今はポイントガードがスコアリーダーになる時代ですけど、だからこそベンチに1人、そういうポイントガードがいてもいいんじゃないかって逆に思うし。ゲームコントロールを突き詰めることが、僕がコートでやるべきことなのかなって思います」

　見据える目標は1つしかない。「優勝につながることだったらなんでもやる」と話す篠山のチームリーダー、フロアリーダー両面における手腕に注目したい。

［10月の試合日程］
B1リーグ第1節
10/7　vs三遠（18:05／川崎市とどろきアリーナ）
10/8　vs三遠（16:05／川崎市とどろきアリーナ）
B1リーグ第2節
10/14　vs三河（15:05／スカイホール豊田）
10/15　vs三河（15:05／スカイホール豊田）
B1リーグ第3節
10/20　vs富山（19:05／川崎市とどろきアリーナ）
10/21　vs富山（16:05／川崎市とどろきアリーナ）
B1リーグ第4節
10/25　vs琉球（19:00／沖縄アリーナ）
B1リーグ第5節
10/28　vs大阪（16:05／おおきにアリーナ舞洲）
10/29　vs大阪（16:05／おおきにアリーナ舞洲）

［公式サイト］
https://kawasaki-bravethunders.com/

■篠山竜青（しのやま・りゅうせい）

　1988年7月20日生まれ、神奈川県出身。北陸高でウィンターカップ準優勝を経験、日本大時代にはユニバーシアード日本代表にも選出された。2011年に東芝ブレイブサンダース（当時）に加入。チームの中心として活躍し、今季在籍13シーズン目を迎える。日本代表でも主将を務めるなどリーダーシップに定評があり、2019年ワールドカップ中国大会に出場した。