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W杯前哨戦に見えたものとは? 3連敗のラグビー日本代表、リーチ“初レッド”で先送りされた課題

数的不利での戦いは「これからに繋がる」

 試合後は落胆の色が濃かった選手たちだが、それぞれの言葉に、このゲームの本質が読み取れる。ゲーム主将の坂手は、「14人になった時に、全員が同じ絵を見続けられる時間は多かったと思う。ミスもあったが皆エナジーを落さずに戦い続けたのは、自分たちにとってこれからに繋がる」と数的不利な中での戦いを評価。FL姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)は「大きなサモアを走らせて疲れさせ、後半は自分たちの流れを掴んで戦うのがプランだった。それに関してはできている部分もありました。コリジョン(接点)の部分で重圧をかけられたからこそ、相手のノックオンも多かった」と振り返った。

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 FB(フルバック)山中亮平(コベルコ神戸スティーラーズ)の「速いテンポでの球出しはできましたが、ただミスで終わっているだけ。そこをもうちょっと正確に継続していればチャンスは何度もあった」という指摘が、今のジャパンの状況を物語る。

 サモアに奪われた3トライのうち2本は、日本のミスが原因だ。先に挙げた決勝トライと、後半8分のFB山中がキックをチャージされて奪われたトライは、本番までに修正可能な失点ではある。だが、W杯まで1か月あまりに迫る段階の日本代表を見ると、浮上した課題がなかなか修正できていないのが懸念材料だ。2019年大会前から、期間中の日本代表はその修正力も強みにしたが、フランスでのキックオフが刻々と近づくなかで、まだ修正が必要な項目が少なくないのだ。

 上記したように進化を感じさせる部分は個々には認めるが、一方でイージーミス、スクラムの不安定さ、サモア戦で向上したとはいえラインアウトの不安定さ、そして組織で連動したスピーディーなアタックの熟成にカバー防御、さらにはまだ沈黙を続けるリハビリ組も含めた選手のコンディションの見極めとコンビネーションなど、修正すべき課題は多岐に渡る。

 繰り返しになるが、W杯8強突破という目標は時間との闘いだ。前向きな面も指摘したが、テストし、調整する時間は潤沢には残されていない。まずはサモアと同様、規約改正によって世界のトップ選手が加わった29日のトンガ戦で、進化を確認するしかない。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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