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73歳名将が女子ラグビー初指導の理由 大学日本一6度、10年ぶり指導で「ハッと気づかされた」

我々の時代とは「技術が変わっている」

 代表理事兼GMには、サッカーの元ブンデスリーガ選手でJリーグ横浜FCのシニアアドバイザーを務める奥村康彦さんが就任して、同チームのグラウンドも借りて練習している。多くの選手の勤務地で、医療法人の拠点でもある横浜市戸塚区に造成中の中外製薬のグラウンドも、今後は練習拠点として使えるなど、他の女子チームにはない練習と仕事両面の環境を作っている。

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 恵まれたサポートの中で、経験豊富な新監督への期待は大きい。しかし、理想のチームを創り上げるには、乗り越えなくてはならない課題もあるようだ。2月28日に行われた就任会見で、選手たちとのこんなギャップを語っている。

「みんなパスが上手いんですよ。今はスピンパスですよね。我々の時代とは技術が変わっているのは女子も同じです。そして、男女差がないくらいのスピードで走る選手もいる。これは、ちょっと自分の女子選手の認識と違っていた。スピードとスキルは、格段の進歩を感じています。だから選手は、僕を古いと思っているでしょうね。昭和かなとかね。だから早く馴染めるようにしたいですね。ちょっとこっちのレベルをアップしていかないといけないのかなと思っています」

 監督就任に伴うチームミーティングや選手との話し合いの中でも、実際に指揮官が思い描くチームの方向性や構想を軌道修正する必要性も感じ取った。

「最初に選手たちを見た時は、あの選手は7人制向きじゃないな、15人制に専念させたらなんて考えていた。でも、キャプテンたちと話すと、そうじゃないんだ。全員で7人制にいきたいんだ、15人制もみんな一緒に戦っていくんだという。そこで、ハッと気づかされたんだね。それって関東学院でもやってきたことと全く一緒だとね。全員が走れて、パスもできるチーム。7人制とか15人制と分けてやる必要ないんだなと」

 創部13年目の横浜TKMだが、築いてきたチーム文化、練習のやり方などの流儀がある。一方で、新たにチームに入ってきた経験豊富な指導者は、就任前からチームの状態や選手の能力を観察しながら、独自の構想を抱いていた。大学最強チームを育てた実績も自信もあるのは間違いないが、関東学院のように自分自身で築き上げてきたのではない既存のチームに単身飛び込んで、思い描く方向へ導くのは容易なことではない。どうやって自分とチームの方向性をすり合わせて、選手、スタッフが納得して勝利へ向かっていくかは、名将であっても柔軟性と忍耐力が求められるだろう。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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