連載「10代逸材のトリセツ」、藤波朱理（レスリング）後編

　日本スポーツ界の将来を背負う逸材は幼少期からどんな環境や指導を受けて育ち、アスリートとしての成長曲線を描いてきたのか――。10代で国内トップレベルの実力を持ち、五輪など世界最高峰の舞台を見据える若き才能に迫ったインタビュー連載。今回はレスリング女子で116連勝中と、破竹の勢いを見せる19歳の藤波朱理（日本体育大）だ。来年のパリ五輪出場への期待も高まる、その強さの原点はどこにあるのか。後編では連勝記録を続けることによる重圧や、日本体育大学に進学したからこそ得られる選手としてのかけがえのない経験について語った。（取材・文＝松原 孝臣）

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　2023年3月、ブルガリアで行われたレスリングの国際大会で優勝し、2017年に始まった連勝記録は「116」を数える。

　この驚異的な記録を継続する藤波朱理は、「結果はもう過去のものでしかないので」と語る。

　それでも周囲の目線は変化していく。周囲はどうしても連勝記録に注目するし、勝てば勝つだけ、期待もさらに高まっていく。期待が大きくなることがプレッシャーとなる選手は少なくない。

　あらためて重圧の有無を尋ねると、こう答えた。

「プレッシャーではないですね。考え方次第だと思います。期待されないことは寂しいことだと思うし、期待に応えたいと思います」

　期待に応えたい――心からそう思った、思いを強める出来事があった。

　昨秋、藤波は左足リスフラン靱帯損傷の怪我を負い、世界選手権欠場を余儀なくされた。

　だが、それをプラスの出来事であったと振り返る。

「1つはレスリングができるありがたさが分かったというか、普通にレスリングができるのは幸せなことなんだな、と思うようになったことです。前だったら絶対思わなかったですし、そういうことに気づく機会になったので良かったです」