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創部64年目でなぜ躍進? 大学選手権初出場、東洋大ラグビー部が貫く“凡事徹底”の精神

福永監督を同志として支える2人のコーチ

 福永がそう話をしている最中にも、ほとんどの選手が引き上げたグラウンドには、落ち葉を集め続ける齋藤主将とスタッフの姿があった。

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 確かに、多くの部員が自主的に掃除をすることが、チームのミスが減る、戦力が上がるという具体的なデータもエビデンスもない。だが、齋藤主将が語るように、チームが同じものを見つめ、同じ価値観を共有して、勝利というゴールに向かうことに、この活動が役立っているのは間違いないだろう。東洋大フィフティーンがリーグ戦で見せてきた迷いのないプレーは、そんな絆で結ばれた組織の一体感を感じさせる。

 チームを29シーズンぶりに1部へ昇格させ、初の大学選手権へと押し上げた力は他にもある。福永がチームに招いたコーチたちの存在だ。

 スタッフの中で、グラウンドでラグビーを指導するのは福永監督とBK(バックス)担当の山内コーチ、そして宮本FWコーチの3人だけだ。コンパクトなコーチングチームだが、福永は「信頼関係がある人でやりたかった。そうなると山内もそうだし、宮本もということです」と、仲間との意思疎通がしやすい少数精鋭体制が理想だという。大学上位校では100人を超える所帯も珍しくないが、コンパクトな体制で目も手も心も行き届くのは、現在の70人台という人数が適当とも感じている。

 山内は大東文化大、宮本は東海大のOBだが、監督も含めて全員が埼玉パナソニックワイルドナイツの前身、三洋電機ラグビー部で黄金時代を戦ってきたメンバーだ。

 山内は2019年に母校のコーチを離れたタイミングで川越にやってきた。福永とは、三洋での現役時代に主将と副将でもコンビを組んだ仲。福永が「BK中心にチームのこと全般をやってもらっています。経験もあるし、何より一番信頼している男なので」と話す、チームに欠かせない人材だ。山内も「前から、いつか一緒にやりたいと思っていた」と三洋時代の主将・副将コンビの再結成を待ちわびていた。

 宮本は三菱重工相模原ダイナボアーズのアシスタントコーチとの兼務だが、「なんせラグビーというのはスクラム」と強化ポイントに挙げた福永が監督就任と同時に声をかけ、週1で指導を続けてきた。その効果は、チームを勢いづけた開幕の東海大戦、そして大学選手権出場を決めた立正大戦でも、ともにスクラムに自信を持つ相手FWを押し込んだことで証明されている。

 この2人が加わることで、チームには三洋電機で培われてきたラグビーが落とし込まれてきた。山内が受け持つBKの練習に目を向けると、4人が1組となったパス練習のようなベーシックなメニューを入念に続けている。ボールを持った選手はしっかりと相手を引きつけてからパスを放ち、受ける側は捕球後に流れずにストレートランを意識する。山内は「結局、基本的なスキルだと思います。僕も三洋電機でいろいろな指導者から教わってきたが、時代が変わっても大事なことは変わらない。戦術が進化しても、根っ子の部分はね。僕自身はそこを重要視してやっている」と、自身が学んできたものを選手にも伝えてきた。

 練習では、このベーシックなスキルに加えて、防御のポジショニングを判断しての飛ばしパス、アタックライン自体も状況を見てアウトサイドにスライドするなどのバリエーションを積み上げていく。この丁寧なドリルの反復と上積みが、ゲームでの外連味のないアタックに繋がっている。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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