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世界と戦う陸上・田中希実 広島で見た、全レースを無駄にしない「自分を律する力」

陸上・織田記念国際が29日、エディオンスタジアム広島で行われ、女子5000メートルA決勝に出場した田中希実(豊田自動織機)は15分23秒87で日本人トップの3位だった。東京五輪は1500メートルで日本人初の8位入賞を果たした22歳。今季も異例の間隔で多数のレースに出続けているが、一つひとつに本気で向き合う姿があった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

織田記念国際女子5000メートルを走る田中希実【写真:奥井隆史】
織田記念国際女子5000メートルを走る田中希実【写真:奥井隆史】

1本もレースを無駄にしない田中希実、本気で向き合う姿とは

 陸上・織田記念国際が29日、エディオンスタジアム広島で行われ、女子5000メートルA決勝に出場した田中希実(豊田自動織機)は15分23秒87で日本人トップの3位だった。東京五輪は1500メートルで日本人初の8位入賞を果たした22歳。今季も異例の間隔で多数のレースに出続けているが、一つひとつに本気で向き合う姿があった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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 たくさんあるレースのうちの1本。そんな意識はない。どの瞬間もバチバチだ。

 気温10度強に冷え込んだ午後6時半の広島で、熱い火花を散らした。1000メートルを3分7秒、2000メートルを6分11秒とゆったりしたペースの先頭集団。日本で活動するケニア勢を中心に進む中、田中も先頭のすぐ後ろで虎視眈々と位置取りした。3000メートルは9分21秒。突如ペースを上げられ、集団が崩れても食らいついた。

 3600メートル付近でトップに立ち、今度は引っ張る形になった。残り1周でペースアップ。勝負を仕掛けた。横並びで迎えた最後の100メートルはガチンコ勝負。スタンドが沸く。田中は猛然と足を回したが、余力のあるケニア勢2人に残り50メートルで差し切られ、15分23秒87の3位。トラックに一礼し、肩で呼吸をしながら取材に応じた。

「いかに余裕をつくりながらラストに溜めておくかということだったんですけど、中盤からやっぱりしんどくなってしまった。先頭に立ってからは自分も休んでいたけど、周りの選手をもっと休ませてしまった。実力の足りなさ、ラスト100メートルのスピードのなさがはっきり出たと思います」

 3600メートルでトップに立った場面。海外勢3人はあえてペースを落とし、休んでいたようだ。「後ろから見ていたら選手が入れ替わって、その瞬間に凄くペースが落ちた。おそらく『しんどくなってきたから、あなたが前に出て』みたいなやりとりがあって、3人で休もうとしていたと思います」。田中は先頭で風を受け、休んだ選手同士の中でも不利な状況に立たされてしまった。

「休むなら休むで変に前に出ずに、ラスト1周に懸けてもっと溜めた方が良かった。相手を休ませてもいいから、正々堂々と(最後に)スプリント勝負に懸ける気持ちでいた方が良かったですね。自分の休むレベルが他の選手にも休ませてしまうペース。そこが地力の足りなさだと思います。相手を休ませないために前に出たのに、中途半端で結局休ませることになってしまった。自分の判断、力が中途半端でした」

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