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ラグビー強豪が医療で地域貢献へ 埼玉ワイルドナイツ、本拠地にクリニック開院の理由

クリニックが誇る広大なリハビリスペース【写真:吉田宏】
クリニックが誇る広大なリハビリスペース【写真:吉田宏】

地元企業の協力を得ながら地域に貢献

 このクリニックは、ただの医療施設だけではなく、将来的に思い描くチームの在り方にも繋がる事業の一つになる。

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「もし具合の悪い方がいたら、ここで診てもらった時に、もし堀江翔太がリハビリしていたらいいですよね。そういう選手が怪我から立ち直っていく姿を見ていただいて、それがもし地域の方の誇りだったり、自分も頑張ろうというモチベーションになればと思います。お互いにそういうなかで応援していただく、ラグビー選手が目標になっていく、誇りになっていく。それが、このクリニックでできればと期待していますし、ここが未来に大きく伸びていくだろうと確信しています」

 地域貢献という観点では大きな期待がかかるクリニックだが、採算性という点で難しさはないのだろうか。

 熊谷ラグビー場周辺は、風光明媚な農村地帯という表現が相応しい、のどかな環境だ。しかし、人が大挙して集まるには、交通手段、滞在スペースなどは十分ではない。何よりも、この場所に来なくてはならない大きな理由がないのだ。2019年ワールドカップ開催時でも、最寄り駅であるJR熊谷駅からのアクセスなどが重要な課題に浮上していた。来るものを拒むとは言い難いが、誰もが快適・簡単にすぐに足を運べる環境とも言えないロケーションだ。このような土地での開業について、石嶋氏は鹿嶋での事業を引き合いに出す。

「鹿嶋のクリニックのある地域は、半径10キロで半分が水(池、沼など)なんです。そういうところで(クリニック)やるのってないですよと、関係者には言われたんです。でも、今は年間6万人が来院しているんです。鹿嶋市の人口が6万7000人で、そういうクリニックになりました。ここ(熊谷)も、しっかりやるべきことをちゃんとやっていれば大丈夫だと思います。

 収益性ですが、今まで鹿島、三鷹は短期で回収するプランを練って結構苦労してきたんですが、熊谷に関しては、いろいろな地域の協力を得られて10年、20年というスパンで物事を検討できることになったのが大きい。普通にやるべきことをしっかりできれば、トントンになると考えています。医療って診療報酬が決まっています。今いる人員でやるべきことをしっかりやればいいという考えです」

 そして、飯島GMの言葉からは、チーム側の視点として、クリニックも巻き込んだコミュニティー作りというビジョンが浮かび上がる。

「地域と連携していくということは、地域に貢献するのと、地域の方の協力を得るというのと両方なんですよね。今まで企業スポーツは、会社からの出資がほとんどで、責任企業だった親会社がみんな費用負担して、そのなかで従業員の一体感醸成とかブランド作りみたいな形でやっていた。でも、熊谷では、この地域でやるからこそ、地域の方にもご協力いただく。

 例えばクリニックの土地確保だってそうだし、ホテル事業も埼玉のヘリテイジさんにしていただいている。そういう意味では、皆さんの協力を得ながらやっていくことになる。そうなると、長い目で話ができますよね。会社の中だと縦割り縦割りで、すぐ結果出せみたいな話になるけど、地域は、そこにずっといようという方たちだから、これは筋がいいよなとか、これは夢があるよねというのは肌感覚で分かるんです」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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