偏差値71、東大志望の山岳男子に聞く「なぜ君は山を登るのか」 山の甲子園に挑む夏
全24人が未経験者、練習は週3日で1日1時間、志望大は名門校ばかり
そんな登山において、3年連続インターハイ出場している県立前橋。しかし、里見監督は「体力・経験の面では決して力があるわけではない」と言う。例えば、私立の新島学園は中学から山岳部があり、太田、高崎も強豪だ。対照的に県立前橋は部員24人全員が登山を始めたのは高校から。“雑草校”のメンバーも、経歴はさまざまだ。
インターハイに選抜された4人のメンバーは、3年生のリーダー・三田修平がサッカー部、内山晃良が野球部、2年生の狩野律斗(りっと)と佐藤勇斗はソフトテニス部と、中学時代は異なる部活の出身。高校から山岳部の門を叩いた理由を聞いてみた。
「サッカーが下手で続ける気がなかった。中学までの経験に左右されず、できそうな運動部を考えた」(三田)
「野球は好きだけど、見る方が向いているなと。小さい頃に家族で行った山登りで山っていいなって思ったので」(内山)
「何か新しいことにチャレンジしてみたかった」(狩野)
「ソフトテニス以外もやってみたいなと。山岳部を選んだのは直感です」(佐藤)
集まった理由はそれぞれ違う。しかし、4人は山の魅力に虜になった。クールな表情の三田も、山の話になると屈託のない笑みを浮かべ、饒舌になる。
「山頂から見える景色がいいんです。晴れていれば、群馬から富士山も見えますよ。それに例えば、群馬と長野の県境を歩くと、自分の道の右側は太平洋につながる利根川水系、左側は日本海につながる信濃川水系。雨が降ったとしたら、ほんのちょっとの距離でどっちに雨水が流れるかで行先が全く違うなんて面白いなと思ったり」
ただ、決して環境に恵まれているわけではない。練習は火、木、金の週3日。それも、1日1時間という短さだ。ある日は4時から練習を開始し、まずはテントの設営の実践、確認を20分ほど。続けて25キロのリュックを背負い、学校の非常階段4階分を20往復して1時間が経ち、終了といった具合だ。
文武両道の難しさもついて回る。リーダーの三田は東大、法曹関係を志す内山は一橋大、医師を目指す狩野は東北大といずれも名門大に進学を目指している。当然、二足の草鞋は並大抵の努力ではない。実際、筑波大を志望している佐藤は勉強に重きを置きたいと3月まで大会のメンバー入りに難色を示していたほどだった。