走りは「靴」と「裸足」どっちが速いのか 東京五輪で考える「日本人の足の指」問題
日本のトップスプリンターもアップでは薄底スパイクを使用
秋本氏も日本人の“指”の問題を指摘する。
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「浮き指は本当に良くなくて、僕もタオルギャザー(指でタオルを引くトレーニング)をしないと、レッグで走ってフットが使えない。なので、日本のトップスプリンターがいまだに薄底の靴でウォーミングアップする割合が圧倒的に多いのは、そういう背景があります。やはり、底が厚いと地面との距離が生まれ、指が使える感覚が鈍くなってしまいます」(秋本)
前述のランニングの厚底シューズについても、一般ランナーには注意を促す。
「厚底にすると怪我のリスクが減るデータもありますが、それはカーボンがないことが条件。カーボンは反発が大きく、足の負担が大きくなります。今は靴のクッション性が良くなり、カーボンなしのちょうど良いランニングシューズはひと昔前より遥かに増えています。それなら、ゆっくりしたペースで距離を踏むことができる。本番ではカーボンが入りの軽くてクッション性のある靴との使い分けが理想だと思います」(秋本)
「クッション性が高い靴は、アキレス腱のバネを補ってくれる。裸足で走ると、その役割を果たすのは自分の腱と筋肉しかありません。自分の脚でアキレス腱の作用を引き出せるかが重要。その前提を整えた上で最新のシューズを履くと、さらにテクノロジーの力が加わり、良くなる。なので、まずは自分の状態をしっかりと整えるために裸足や薄いシューズで走ることがオススメできます。
アスリートですら日常的に厚底を履いてトレーニングはしておらず、一般の方が話題性やファッション性で厚底だけを履き続けてしまうと、実は体の負荷がかなり高いので、状況に応じて履き分けながら使用すべきだと思います」(伊藤)
あまり知らない日本人の指とシューズの進化。正しく、速く走るためには知っておきたい知識だ。
■伊藤友広 / Tomohiro Itoh
1982年生まれ、秋田県出身。国際陸上競技連盟公認指導者(キッズ・ユース対象)。高校時代に国体少年男子A400メートル優勝。アジアジュニア選手権日本代表で400メートル5位、1600メートルリレーはアンカーを務めて優勝。国体成年男子400メートル優勝。アテネ五輪では1600メートルリレーの第3走者として日本歴代最高の4位入賞に貢献。現在は秋本真吾氏らとスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。
■秋本真吾 / Shingo Akimoto
1982年生まれ、福島県出身。双葉高(福島)を経て、国際武道大―同大大学院。400メートルハードルで五輪強化指定選手に選出。200メートルハードルアジア最高記録(当時)を樹立。引退後はスプリントコーチとして全国でかけっこ教室を展開し、延べ7万人を指導。また、延べ500人以上のトップアスリートも指導し、これまでに内川聖一(ヤクルト)、槙野智章、宇賀神友弥(ともに浦和)、神野大地(プロ陸上選手)、阪神タイガース、INAC神戸、サッカーカンボジア代表など。
(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)