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女性コーチが増えない日本のスポーツ界 「女性は男性を教えられない」は先入観?

「子育て=女性中心」のような家庭内役割分担の意識も考える必要がある、と井本さんと伊藤教授は語る【写真:中戸川知世】
「子育て=女性中心」のような家庭内役割分担の意識も考える必要がある、と井本さんと伊藤教授は語る【写真:中戸川知世】

子育ては女性中心と考えると「女性にコーチ業は向かない、となる」

伊藤「子育てを女性中心のものとして考えていると、女性にコーチ業は向かない、となりますよね。男性と女性がいかにしてお互いを支援し合い、家庭というチームワークを高めていくかはすごく重要なはずなのに、暗黙のうちに、子育ての負担は男性側に行かなくなっている。自然にそういう発想になる風潮が、世の中にあります。母乳を直接与えることだけは男性ではできませんが、それ以外は男性が面倒をみたっていい。両方の親がチームとして一緒に子育てをしていくことが重要ですから……と言う僕自身も、自分自身の子育てについては、反省ばっかりです。

 でも、昔のジェンダーの価値観で様々な選択が狭まっている現状は、今後どんどん変わっていくと思います。特に少子化が進み、みんなで協力しながらコミュニティを発展させていくために、そしてみんなが幸せになっていくために、国全体の労働力をどう活用するかはとても重要な問題です。みんながもっと働きやすく、チャレンジできる社会を作っていかないと、少子化やジェンダーの問題は解決されません」

井本「でも、男性にも女性にもある、家庭内役割分担の意識を変えるのは、とても時間がかかりますよね。女性コーチ育成プログラムの中で、解決できる問題ではありませんし」

伊藤「そうなんです」

井本「女性の指導者を育成するときに、旦那さん選びの大切さまできちんと伝えておかないとダメですよね(笑)」

伊藤「あ、それはありますね! 次回、入れておきます(笑)。固定観念として持っている役割認識を変えていくシステムのようなものができたら、すごく面白いんじゃないかな。結局は、固定化されたマインドセットにどう働きかけられるかですから。僕たちは受け継いできたものに、無頓着に従っていますよね。例えば家に帰ったら靴を脱ぐことも、ジャンプしたら重力で降りてくるのと同じように、当たり前に思っています。

 僕たちは、いろんな文化に支配されている。スポーツ界で言うと、体罰の問題もしかり。でも、当たり前すぎて気づいていないことに、みんなが気づいていきながら、より良いものとは何かを考えていかなければいけませんよね」

(25日掲載の後編へ続く)

【前編】日本に女性エリートコーチが少ないのはなぜ スポーツ界で固定された“男女の構図”とは
【後編】競泳界の名将も「絶対大切」と賛同 日本の女性コーチ育成に「競技横断ネットワークを」

■伊藤 雅充

 日体大体育学部教授、博士(学術)、コーチングエクセレンスセンター長。愛媛県出身。2001年3月に東大大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系で博士号取得。2008年4月より日体大准教授、2017年4月から現職。選手本位の「アスリートセンタード・コーチング」のモデル策定に取り組み、コーチングの発展・普及、コーチ教育などに取り組んでいる。国際コーチングエクセレンス評議会コーチング学位基準策定委員、日本体育協会モデル・コア・カリキュラム作成ワーキンググループ委員、日本スポーツ協会公認スポーツ指導者制度検討プロジェクト委員などを歴任。スポーツ庁委託事業女性アスリートの育成・支援プロジェクト「女性エリートコーチ育成プログラム」の運営責任者。

■井本 直歩子 / Naoko Imoto

 東京都出身。3歳から水泳を始める。近大附中2年時、1990年北京アジア大会に最年少で出場し、50m自由形で銅メダルを獲得。1994年広島アジア大会では同種目で優勝する。1996年、アトランタ五輪4×200mリレーで4位入賞。2000年シドニー五輪代表選考会で落選し、現役引退。スポーツライター、参議院議員の秘書を務めた後、国際協力機構(JICA)を経て、2007年から国連児童基金(ユニセフ)職員となる。JICAではシエラレオネ、ルワンダなどで平和構築支援に、ユニセフではスリランカ、ハイチ、フィリピン、マリ、ギリシャで教育支援に従事。2021年1月、ユニセフを休職して帰国。3月、東京2020組織委員会ジェンダー平等推進チームアドバイザーに就任。6月、社団法人「SDGs in Sports」を立ち上げ、アスリートやスポーツ関係者の勉強会を実施している。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)


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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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