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小学生の従妹に「男と女どっちなの?」と聞かれ トランスジェンダーの大学院生が伝えた言葉

世界的に類を見ない「性転換の治療」にまつわる研究を進めるワケ

須永「自分自身の事情はもちろんですが、例えば結婚したいパートナーの有無などによっても、タイミングが異なってくるのかもしれませんね」

山田「見た目だけで言うと、FtMの場合、性転換の手術をしなくても、体形によっては(戸籍上は)女性だとわからない人も多いんです。FtMのコミュニティの方たちの話を聞いても、体は女性のまま周囲には気づかれずに、男性として働き、男性として生きている人も少なくありません」

須永「『私は女性です』など、誰もがわざわざ口にしないですからね」

山田「はい。当事者の間では『トランスジェンダー』とか『FtM』『MtF(Female to Male、またはTF=トランスジェンダー女性。法律上の性別は男性、性自認は女性)』というワードを、世の中に広めないでほしいという声もあります。オープンにしたくない方ももちろんいますから」

須永「山田さんが今、進めている研究は、性ホルモンの研究分野を世界的に見渡しても、類を見ない内容です(女性から男性への性転換の治療を受けている方を対象に、シスプロファイル<健康診断で測られる様々な数値>の変化について)。この研究内容を決めたのは、性転換の治療をしているFtMの友人から、からだの不調に関する話を聞いたことがきっかけだったようですね」

山田「FtMの手術をされた方は、その後、健康診断の数値が悪くなる傾向がみられます。例えば、高脂血症や脂質上昇、糖尿病のリスクなども上がり健康を害するという報告が上がっているんです。自分の場合、FtMの同級生や友人がすごく多い。それだけに、治療後の健康問題は非常に気になっていましたし、悩む声も上がっていました。自分も将来的に手術をする可能性がありますし、改善の可能性につながる研究をしたい、という思いが強くありました」

須永「いろいろな方とかかわる中で、研究という目標ができたんですね」

山田「私は運動による数値の変化に着目し、研究を行っていますが、既存の研究とは視点や着目点が異なるので、友人や大学の先生方からも『面白い研究ですね』という声をよくいただきます。それが本当にうれしいし、励みになるし、頑張ろうと思えます」

須永「私も研究者の一人としてとても楽しみにしています。将来的にもこの分野の研究をもっと深めたい想いはありますか?」

山田「今はFtMの健康維持・増進をテーマに研究を進めているので有酸素運動による反応を見ていますが、ゆくゆくは性転換手術を行った際の、スポーツパフォーマンスも見ていきたいと考えます。例えば、現時点では男・女の競技スポーツの出場資格は、性別の規定を性ホルモンだけで述べられています。でも、ホルモン治療や性転換手術を受けたMtF、FtMの選手は、パフォーマンスにどう影響しているかは全くわかっていません。ですから、今後の研究課題として挙げていきたいです」

須永「スポーツの話に戻りますが、日本のスポーツ選手では最近、女子サッカーの横山久美さん(NWSL/ゴッサムFC)がカミングアウトされました。このことを、どう受け止めましたか?」

山田「今はまだ、横山さんのような知名度のある選手がメディアを通じて、『自分はトランスジェンダーである』と表明しないと、なかなか理解してもらえない、受け入れてもらえない社会なのかなと、感じました」

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須永 美歌子

日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)、『1から学ぶスポーツ生理学』(ナップ)

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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