「8強入りは十分可能」― 前回W杯の“影のリーダー”廣瀬俊朗が語る4年前との違い
ラグビーワールドカップ日本大会は、100日後の9月20日にキックオフを迎える。大会ベスト8入りに挑むジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)率いる日本代表は、6月3日にメンバーを42人に絞り込み、同10日から宮崎での強化合宿をスタートした。全国各地でワールドカップへ向けたさまざまなイベントも開催される中で、THE ANSWERでは、サンケイスポーツで20年以上にわたり楕円球を追い続けたラグビーライター吉田宏氏が、日本ラグビーを支えてきたレジェンドたちの、日本代表、ワールドカップ成功への熱い思い、そして提言を綴る、毎週水曜日の連載「楕円の軌跡―レジェンド・トーク2019」をスタートさせる。
ラグビーW杯開幕まで100日、新連載「楕円の軌跡―レジェンド・トーク2019」スタート
ラグビーワールドカップ日本大会は、100日後の9月20日にキックオフを迎える。大会ベスト8入りに挑むジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)率いる日本代表は、6月3日にメンバーを42人に絞り込み、同10日から宮崎での強化合宿をスタートした。全国各地でワールドカップへ向けたさまざまなイベントも開催される中で、THE ANSWERでは、サンケイスポーツで20年以上にわたり楕円球を追い続けたラグビーライター吉田宏氏が、日本ラグビーを支えてきたレジェンドたちの日本代表、ワールドカップ成功への熱い思い、そして提言を綴る、毎週水曜日の連載「楕円の軌跡―レジェンド・トーク2019」をスタートさせる。
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第1回は、4年前のイングランド大会で日本代表の躍進を“影のリーダー”として支えた廣瀬俊朗氏。今年2月で東芝を退社して、日本のラグビーをさらに盛り上げるためのチャレンジもスタートさせたレジェンドが、桜の戦士たちに厳しくも力強いエールを送る。
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ワールドカップを2度制覇した優勝候補の南アフリカからの金星、そしてプール戦(1次リーグ)3勝と、日本代表が過去にない躍進をみせた4年前のワールドカップ・イングランド大会。日本が、そして世界が熱い視線を送った桜の勇者の中で、1度もジャージーを着ることがなかった異色の選手が廣瀬俊朗氏だ。当時、日本を率いたエディー・ジョーンズHCは、周到な準備でチームを鍛え上げたが、31人という限られたワールドカップメンバーに、試合で起用することを考えてなかった廣瀬氏を敢えて選んだのだ。
理由は、その冷静な判断力と、慶大大学院入学を辞して、東芝では研究ラボにも勤務した明晰な頭脳、そして代表選手誰からも信頼される人間性とリーダーシップを、チームに欠くことのできない戦力だと判断したからだ。同じ東芝のFLリーチ・マイケル主将をグラウンド外で支え、チームを一丸にまとめあげて、日本ラグビーに新たな歴史を刻んだ男は、4年前といまの日本代表を比べて、こう指摘する。
「いちばん変わったのは、選手のマインドセットのところでしょう。いまの日本代表は、普通に勝てるという意識が選手にある。どんな相手でも『オレらできる』と思ってやってますね。4年前の今頃は、まだ本当に勝てない、でもやるしかないという雰囲気でした」
ジョーンズHCは、日本選手に根付いた世界トップ10レベルの強豪には勝てないという“負け犬根性”を拭い去って、強化に成功した。だが、その当事者であった廣瀬氏でも、祖国での開幕を待つ“ジェイミー・ジャパン”フィフティーンから、4年前とは比較にならない揺るぎない自信を感じ取っている。もちろん、2015年の躍進が自信の基盤となり、その後の新生日本代表の1歩1歩の足跡が、チームのマインドをさらに進化させてきた。
2016年には、敵地カーディフのプリンシパリティスタジアムでウェールズ代表に30-33と肉薄。17年には、同じくアウエーでフランス代表に23-23と、史上初の引き分けを演じてみせた。昨秋にはニュージーランド(NZ)代表オールブラックスに31-69で敗れはしたが、世界最強の相手から5トライをマークした。史上初の“ラグビーの聖地”トゥイッケナムで行われたイングランド代表戦では、前半を15-10(最終スコアは15-35)と互角以上に渡り合った。金星こそなかったが、このティア1ネーションズと呼ばれる強豪との激闘が、日本代表に4年前以上の自信を植え付けたのだ。
戦術面での4年前との違いも明白だ。廣瀬氏がジェイミー・ジャパンの特徴に挙げるキーワードが“自由”だ。
「日本代表のスタイルは大きく変わっています。創造性が必要になってきてると思います。4年前はシェイプというか、型に落とし込んで、そこから空いているスペースを探すというイメージ。でも、いまはさらに自由度の高いラグビーに取り組んでいる」