プレーオフ決勝は2つのテーマ「楽しむ」と「Be Us（自分たちらしくあれ）」

　学びを重ねながら迎えたプレーオフ。リーグ第14節でも大勝した神戸Sとの準決勝は相手をノートライに封じて退けたが、決勝へ向けてはCCという立場では2つのテーマを用意したという。

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「先ずは『楽しむ』ということ。そして『Be Us（自分たちらしくあれ）』ということです。僕らは決勝だけではなく、準決勝も含めてプレーオフ全体をファイナルと呼んでいましたが、選手たちはゲームのインテンシティー（強度）や試合で何が来るか（どのような状況に晒されるか）ということはよく分かっていた。そこへ向けてどんどん意識が研ぎ澄まされていくので、楽しむという空気を作ることを意識したんです。決勝戦という大きな舞台では、選手はこれまでやらなかったようなことをしようとか、何か特別なプレーをしようという気持ちが出てくる。でも、大事なのは自分たちが作り上げてきたもの、自分たちの強い所をしっかり出していくことです。僕たちは、自分たちの強みを基にゲームプランを準備します。だから自分たちであることをマインドセットとして持つことが大事だし、それでいいんだというのを重視しましたね」

　“自分たちであること”。まさに金言だ。プレーオフへの準備で森田CCやコーチ陣が改めて選手に求めたのは、ビッグマッチや連覇という重責に対して構えてしまうのではなく、リーグ戦同様に用意したゲームプランを遂行すること。つまりリーグ戦で積み上げてきたBL東京のラグビーを貫くことだった。当然、コーチ陣の中には、それが出来れば勝てるという自信もあったはずだ。決勝戦へ向けて、選手たちの中でも練習中に「Be Us」という言葉が交わされていたという。チームのフォーカスポイントは、いかに自分たちのスタイルを貫くかという1点に収斂されていった。

「僕たちも毎週テーマを落とし込んでいくんですけれど、それも自分たちであること、自分たちらしくあること、そこに信念を持っていくことを大切にしていました。そして1試合1試合の積み重ねの中で、とにかく作るべきものは作ってきた。なので、ここ（ファイナル）からは自分たちを表現することが大事だった。特別な事、スペシャルな事をしなくていいというのは、リーダーグループの選手たちも言ってくれていましたし、僕たち全体でそういう共通認識を持っていた。でも、そう言ったところで選手たちに特別なことをさせてしまうのがファイナルという舞台です。特別なプレッシャーや緊張感が、特別なことをしないといけないいんじゃないかという気持ちにさせてしまう。なので、自分たちの中で何回も何回も共通認識を持ちながら準備出来たのが良かったと思います」

　そうして迎えた決勝戦。それはチームにとって、選手やコーチ、そして森田CCが1年かけて積み上げてきたものの、まさに集大成のような80分になった。まず、対戦相手のS東京ベイをどんなチームと分析して決勝戦に臨んだのかを振り返る。

「リーグ戦同様に、相手はとにかく僕たちを遅くプレーさせたいと考えてきた。準決勝でも埼玉WKをすごく遅くプレーさせていましたね。狭く、小さくプレーさせ続けていたんです。彼らは大きく、フィジカルです。狭いエリアで相手をプレーさせれば、その周辺エリアにはS東京ベイの選手がいて、抱え上げてくる。スクラムを得れば、プレッシャーを掛けてこようとする。彼らにとっての大きなモメンタムを握ろうとしてくるのです。ポイントとしては、セットピースからの相手ペナルティー、もしくはセットからのいくつかデザインされたプレーがあるので、そこの闘いに持っていこうとする。そういうプレーで、僕たちの中に入って来るわけです」

　このような強烈なフィジカルで挑んでくる相手に対して、1週間どんな準備をしていたのか。実際に決勝の舞台でどんなゲームをしようと意図していたのだろうか。

「で、僕たちは逆にボールをプレーするラグビーを目指している。ボールを動かしていく、速くプレーをする、そうするために、どうやってスピアーズを動かせるかが大事でした。なので、戦術面ではディフェンスコーチに今週（決勝）のキックの戦術はこういくから、そこからのディフェンスを準備するように、FWコーチにはセットピースの闘いに備えることを伝えました。そしてチームが挑んだのは、いつもボールを動かしていくこと、速くプレーしようとすることです。それによってゲームがどんどんアンストラクチャー（秩序の崩れた状態）になっていって、ディフェンスのコード（法則、約束事）が崩れていくのです」