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「他のスポーツは日本国籍を持てば平等なのに…」 ラグビー界で賛否、導入される“日本人選手優遇”新規約の問題点を検証

軽視してはいけない海外出身選手が日本ラグビーに払ってきた犠牲

 このように幾つかの懸念材料はあるが、2シーズン後の追加カテゴリ導入は原則的には賛成だ。日本で生まれ育った選手の普及・育成という観点では重要な規約変更だろう。敢えて導入2シーズン前という段階で概要を発表したのは、この変更で影響を受ける既にチームに入団している選手、これから契約、入団する選手、雇う側のチームにとっても、時間をかけて対処する必要があるからだ。一部のチーム首脳からはカテゴリAからA-2へと移行する選手のためには「2シーズン後でも早すぎる」という声も聞いた。

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 その2シーズン後の導入へ向けて、東海林専務理事は「チーム編成だったり選手のキャリア形成にも一定の影響があることなので、頻繁に規約を変えることは想定していない。今回についてはまず2年間しっかりやること、その中で枠自体を大きく変えることはなく、人数見直しについては2年程度経た時に改めて協議するという方向」と説明した。大枠は崩さず、微調整の余地があることは認めている。導入までに求めたいのは、先に挙げた代表経験者のような選手に対する敬意ある処遇を検討することだ。

 繰り返しになるが、軽視してはいけないのは、この代表経験者を始め多くの海外出身選手が日本のラグビーが進化、発展するために多くの犠牲を払ってきた現実だ。彼らはパスポートや肌の色に関係なく、日本ラグビーにとってのヒーローであり、新たな歴史を切り開いた開拓者たちでもある。このような選手たちが、自分たちの過ちでも、ルール違反でもない理由で、従来よりもプレー機会が減り、もし雇用にもネガティブな影響があるとすれば、それはここまで代表チームや選手たちが築いてきた日本ラグビーのレガシーすら貶めかねない決定だろう。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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