[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

ドローに終わった全勝対決、今後のヘビー級戦線はどうなる? 現地記者が徹底解説

「(今夜の試合を)楽しまなかった奴が存在するのかい?!」

デオンテイ・ワイルダー、タイソン・フューリー【写真:Getty Images】
デオンテイ・ワイルダー、タイソン・フューリー【写真:Getty Images】

最終Rのダウンでドローに持ち込んだワイルダー、この決着が今後にもたらす意味とは

「(今夜の試合を)楽しまなかった奴が存在するのかい?!」

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

 試合後の記者会見場に姿を見せると、元世界ヘビー級統一王者タイソン・フューリー(英国)はいつも通りの大声でそうまくし立てた。米国のボクシングメディアは一筋縄ではいかない皮肉屋揃いだが、そんな彼らをしても、この日は傍若無人なフューリーの問いかけに思わず首を振らざるを得なかっただろう。

 12月1日、ロサンゼルスのステイプルスセンターで行われたWBC世界ヘビー級タイトルマッチはドラマチックな激闘になった。元王者のフューリーがアウトボクシングで主導権を得れば、王者デオンテイ・ワイルダー(米国)も9回にダウンを奪って反撃。それでも全体にややフューリーが優勢という印象のまま迎えた最終ラウンド、まるでボクシング映画や漫画のような見せ場が待っていた。

 この回も開始から約40秒。ワイルダーの渾身の右ストレートと返しの左フックで、身長206センチという巨体のフューリーが背中からキャンパスに崩れ落ちる。この日まで40戦全勝39KOというワイルダーが奪った痛烈な2度目のダウン。その瞬間、誰もが怪物パンチャーの逆転KO勝ちを信じたはずだ。しかし――。

 ほとんどカウントアウトされるギリギリで立ち上がったフューリーは、そのままファイトを継続。以降はクリンチで逃げ切りを図るのではなく、カウンターで逆に王者にダメージを与えるシーンすらあった。こうして両者が持ち味を出し合った激しい攻防の末、試合は判定にもつれ込む。3人のジャッジの採点は1人が115-111でワイルダー、1人が114-112でフューリー、もう1人が113-113の引き分け。三者三様のドローに終わり、誇り高き巨人たちの戦いに決着はつかなかった。

 試合後、劣勢をほとんどひっくり返しかけたワイルダーの強打と同時に、フューリーの驚異的な回復力に話題が集中した。

「なぜ立ち上がれたのか?私にもわからない。“聖なる手”が私を引き上げてくれたのだろう。私こそが真の王者だから、倒されたまま横たわっているつもりはなかった」

 会見の壇上でそんな洒落たコメントを連発したフューリーは、最後にドン・マクリーンの名曲“アメリカン・パイ”を熱唱。“米国内では近年最大のヘビー級戦”と呼称された一戦で、30歳の英国人は常に騒がしく、それでいて華やかに主役を務め上げてくれた。

1 2 3

杉浦 大介

1975年、東京都生まれ。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、ボクシング、MLB、NBAなどを題材に執筆活動を行う。主な著書に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)、「イチローがいた幸せ」(悟空出版)。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA Jleague
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集