なぜ「走り」は働く人に刺さるのか “走りとビジネス”に共通する「PDCAの思考学」
“走りとビジネス”に共通する「PDCA」のサイクル
丸山「例えば目の前のお客さんに対し、いかにその方の幸せを作っていくかの仮説を立てて何度もトライし、可視化して、上司とも共有する。こういったPDCAを回す働き方は、陸上や個人種目に似ていますよね」
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北田「仕事をする上で、大・中・小の目標を持つことはとても大切です。しかし、最近は目標を作ったり、自ら課題を出したりする言う人が少ないと感じます。また、目標を達成できなかった場合、本人に課題をきちんと伝えないと、漠然と『できませんでした』で終わる。それでは何も積み上がっていきません。何がいけなかったのかを振り返らなければ、こうすれば改善するのでは、という仮説も立てられない」
丸山「日本の学校教育の影響もあると思います。例えば1+1=2という答えに至るまでに、どういう思考を経たかが重要なのに、答えが間違っていなければOK。それでは、思考力もつきづらい。子どもの課外教育におけるスポーツ教育は領域が広い。例えばプロセスのなかで自信を深める経験をすれば、思考の変容を促し、結果、学習や人間関係にも生きてくるのではないでしょうか。子どもに限らず、スポーツを使うことで、北田社長の言う課題感を中長期で解決していけるものになると思います」
秋本「野球やサッカーは、投げ方や蹴り方が人によって全く異なり、どうしてもメソッドできない部分が多いと聞いたことがあります。でも足を速くすることには、回転×歩幅という絶対的な理論があります。それに応じたメニューを作れば、誰もが『速く走る』という目標に向かって取り組めます。企業研修では理論を学び、実技を行いますが、皆さん、何かしら値が向上します。この時、アクティビティがあることが大事だと思っていて、『自信をつけます!』という精神論ではなく、アクティビティを経ることで自信がつく。『足が速くなりましたね。これもPDCAを回した結果ですよね』と話しています」
北田「記録が出せる人になれなくても、『0.01秒』で学ぶことは、必ず次につながっていくと思います。『0.01秒』速くなることが偉いのではなく、次へのステップになる。その感覚が大切」
伊藤「爽快感や構造理解など、走りを通して得たものを、自分の仕事に落とし込んでいく。その意識が高まれば、一人ひとりにいい循環が起き、会社全体も元気になります。結果、会社の利益にもつながったら、走りの専門家としては、非常に嬉しいですね」
<北田理> 株式会社アセットリード代表取締役社長。アセットリードは不動産売買・仲介・賃貸管理事業ほか、グループ全体で建設、賃貸リーシング、アセットマネジメント事業を行う。また、CRS活動の一環としてブラインドサッカーに協賛。日本代表や各種イベントをサポートする。東京都スポーツ推進企業。
<丸山和大> 株式会社Criacao代表取締役社長CEO。総合商社を経て、13年株式会社Criacaoを創業。地域スポーツの推進、スポーツ人材のキャリア教育、企業やビジネスパーソンに向けたビジネスコンサルティング、そしてサッカークラブCriacaoの運営等、スポーツを軸に多岐にわたる事業を展開。
<秋本真吾> 2012年まで400メートルハードルのプロ陸上選手として活躍。オリンピック強化指定選手にも選出。当時、陸上特殊種目200mハードルアジア最高記録日,本最高記録.学生記録を樹立。2013年からスプリントコーチとしてプロ野球球団、Jリーグクラブ所属選手、アメリカンフットボール、ラグビーなど多くのスポーツ選手に走り方の指導を展開。現在はアテネ五輪1600メートルリレー代表の伊藤友広氏らとスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。
<伊藤友広>
国際陸上競技連盟公認指導者(キッズ・ユース対象)。高校時代に国体少年男子A400メートル優勝。アジアジュニア選手権日本代表で400メートル5位、1600メートルリレーはアンカーを務めて優勝。国体成年男子400メートル優勝。アテネオリンピックでは1600メートルリレーの第3走者として日本歴代最高の4位入賞に貢献。現在は秋本真吾氏らとスプリント指導のプロ組織「0.01 SPRINT PROJECT」を立ち上げ、ジュニア世代からトップアスリートまで指導を行っている。
(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)