井上尚弥に悔しさを与えた有明の空席 必要なのは発言か、キャラか…「実力だけ」で叶えた東京D
ボクシングの世界スーパーバンタム級(55.3キロ以下)4団体タイトルマッチ12回戦が6日、東京ドームで行われ、王者・井上尚弥(大橋)がWBC1位の指名挑戦者ルイス・ネリ(メキシコ)に6回1分22秒TKO勝ちした。34年ぶりに開催された東京ドームボクシング興行。過去にドーピング騒動や体重超過を起こし、日本と因縁深い悪童を迎え撃ち、4万3000人を熱狂させた。
井上尚弥がネリに逆転TKO、こだわり続けた「ボクシングで魅せる」
ボクシングの世界スーパーバンタム級(55.3キロ以下)4団体タイトルマッチ12回戦が6日、東京ドームで行われ、王者・井上尚弥(大橋)がWBC1位の指名挑戦者ルイス・ネリ(メキシコ)に6回1分22秒TKO勝ちした。34年ぶりに開催された東京ドームボクシング興行。過去にドーピング騒動や体重超過を起こし、日本と因縁深い悪童を迎え撃ち、4万3000人を熱狂させた。
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日本人で初めてメインイベントを務めたが、かつては会場が「半分も埋まらない」時期も経験した。ファンを楽しませるためにこだわり続けたのは「ボクシングで魅せる」。試合内容で魅了し続けたことでたどり着いた世紀の興行だった。戦績は31歳の井上が27勝(24KO)、29歳のネリが35勝(27KO)2敗。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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ほんの一瞬、東京ドームの時が止まった。
初回、井上が接近戦からアッパーを放った直後だ。ネリの左フックが顎に着弾。あの世界最強モンスターがリングに這いつくばった。4万3000人の頭上にそろって浮き出た「!?」。スリップか。違う、まさかのダウンだった。
高校2年時に父・真吾トレーナーとやったスパーリングでボディーを受けてダウンしたことがあるが、試合では初ダウン。状況を理解したファンからどよめきと悲鳴が沸騰した。真顔でレフェリーのカウントを見つめる井上。立ち上がり、再開後もロープを背負った。
1990年にマイク・タイソンがジェームス・ダグラスに大番狂わせを許して以来の東京ドームボクシング興行。だが、2度目の悲劇はない。2回、ネリの打ち終わりに狙いすました左フック。ダウンを奪い返し、挑戦者を見下ろした。5回にもロープ際から左フックで2度目のダウン。決着は6回、右アッパーからの右フックで3度目のダウン。崩れ落ちた悪童を背にコーナー上で絶叫した。
東京ドームがそのまま爆発してしまいそうな熱気。国民的ヒーローは安堵の汗を拭い、自虐を込めた。
「凄いプレッシャーがあったんですけど、皆さんの声援が僕のパワーになりました! 1ラウンド目のサプライズ、皆さんたまにはいかがでしょうか!?」
興奮と笑い、感動に包まれた客席。ただ、この光景は井上にとっても当たり前じゃなかった。
「スーパーフライ級時代に有明コロシアムを超満員にできない時代もありました」
悔しさを味わったのは2015~17年、スーパーフライ級王座の防衛戦を開催した同会場。強敵にも恵まれず、大橋秀行会長は約1万人収容でも「半分も埋まらない時があった」と振り返る。「試合だけで魅せてきて東京Dでやれる。実力だけで東京Dにたどり着いたのは大きなことなんです」