日本にスターが大挙する理由は「カネ?」 年俸9桁(億)も不思議じゃないラグビー界のマネー事情
選手たちが使用しているサバティカル制度とは
「お金ももちろん選択理由の一部だろうが、すべてではないと思う。現役時代、自分自身ニュージーランドからスコットランドに移籍した時は、違う環境を経験してみたかったというのが純粋な理由でした。例えばリッチー(モウンガ)なら、クルセイダーズだけで長くプレーして何連覇も果たし、全てを勝ち取った状態だった。何か新しいルーティンや新しいラグビーなどの環境を求めての判断だったと思う。家族も含めて、何か新しいことを経験しようと思ったのではないだろうか。
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選手もそうですけど、コーチの質という面でも、今の日本では国際舞台を経験したデイブ・レニー(神戸HC、元オーストラリア代表監督)、ロビー・ディーンズ(埼玉監督、同)、スティーブ・ハンセン(トヨタ・ディレクターオブラグビー、元ニュージーランド代表監督)と素晴らしい指導者がいて、スーパーラグビーよりもレベルが高いと思う。惹き付けられるのはお金だけじゃなく、リーグのクオリティーの高さなのです」
指導陣の充実ぶりはもちろんだが、環境を変えたかったという来日理由は、モウンガはもちろんケインら多くの選手が口にしてきた。何シーズンにもわたり同じチーム、リーグで厳しいゲームを続けることによる精神的なストレスは、トップ選手の中ではとりわけ多い印象だ。その一方で、日本のファンについて「いつも勝敗関係なしに選手、チームを応援し続けてくれるのが素晴らしい」と語る選手もいる。
そして、そんなタイプの選手たちの何人かは「サバティカル」と呼ばれる制度を利用して来日している。日本語にすれば「(有給)長期休暇」という意味だが、1シーズンに限り母国リーグや代表の活動から離れることが出来るこの制度は、ニュージーランド、オーストラリアなど選手が海外クラブに移籍すれば代表選考から外れるという原則がある国で積極的に使われている。今季でいえば、オールブラックス主将のケイン、そして3シーズンぶりの来日となったボーデン・バレットらが適用者だ。
この制度は、代表で活躍するトップ選手に心身双方での休息や、引退後のセカンドキャリアの準備などのために自由に使える時間を設けようというものだが、1シーズン限定でもプレーしてほしいという日本チームのニーズと上手く合致して、ビッグネームの来日をさらに増やすことに繋がっている。
その一方で、サラリー面でも魅力を感じる選手は少なくないはずだ。最高クラスの年俸については、最も資本力があるヨーロッパの強豪リーグをリーグワンが追い上げている一方で、中堅、若手などの年俸には差があるようだ。2022年に来日したフランス代表では、初キャプレベルの選手でもTOP14で5000万円を超える契約を結んでいると聞いた。まだプロ化へと移行中のリーグワンでは、ここまでの手厚い報酬はチーム運営費からみても不可能だが、純粋な金額以外の利点がある。
シーズン期間をみると概ねTOP14が10か月、プレミアシップは8か月と長期戦だが、リーグワンの場合は今季、昨季ともに5か月(今季は暫定日程)と半年以内の日程になっている。当然のことながら試合数も日本が少ない。しかも試合による選手のフィジカル面の消耗などは、海外リーグが大きいと考えられる。つまり実質的な拘束時間や身体的な負担も含めれば、実際の報酬が若干低くても日本でプレーすることのほうがコスパのいい契約だと考えることも出来る。加えて、地理的には南半球、ヨーロッパ諸国共に大陸間を跨ぐ移動が必要な日本だが、オセアニア勢にとっては、ヨーロッパに比べれば大きな時差がなく、一晩のフライトで行き来できることの利便性を重視する選手もいる。
サベア、モウンガと共に、開幕から華麗なプレーでファンを魅了してきたのがコルビだ。南アフリカ代表ではWTBが中心だが、東京SGではFBとの兼務でプレーする。状況に応じてSOの位置に立つシーンも多く、昨季王者・船橋との開幕戦では、後半46分の敵ゴール前ラックでSHからパス受けると、オーストラリア代表でも活躍する相手のSOバーナード・フォーリーの内側を抜いてからの飛ばしパスでCTB森谷圭介のトライを引き出した。チャンスメーカーとしても高い能力を見せた南アフリカのエースは、日本を戦場として選んだ理由をこう語っている。