イ・ボミが覆した日本メディアの報道態勢 「嫌いな人はいない」人間性が外国人の地位を変えた
女子ゴルフの国内ツアー・NOBUTA GROUP マスターズGCレディース第2日が20日、兵庫・マスターズGC(6495ヤード、パー72)で行われ、韓国の2015、16年賞金女王イ・ボミ(延田グループ)は通算11の99位で予選落ちした。この日で日本ツアー引退。実力と人気を兼ね備え、日本女子ゴルフ界の一時代を彩った35歳が日本のツアー生活に別れを告げた。
NOBUTA GROUP マスターズGCレディース
女子ゴルフの国内ツアー・NOBUTA GROUP マスターズGCレディース第2日が20日、兵庫・マスターズGC(6495ヤード、パー72)で行われ、韓国の2015、16年賞金女王イ・ボミ(延田グループ)は通算11の99位で予選落ちした。この日で日本ツアー引退。実力と人気を兼ね備え、日本女子ゴルフ界の一時代を彩った35歳が日本のツアー生活に別れを告げた。
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記事に“なりにくい”外国人選手としては異例の人気を誇り、スター不在だった日本ツアーを救った名ゴルファー。飾らない人柄と愛くるしい笑顔、誰にでも分け隔てなく愛を注ぐ人間性は、ファンもメディアも虜にした。その姿は13年前に初めて日本で取材を受けた日から、クラブを置く最後の瞬間まで変わらない。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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最後は涙と笑顔に溢れた18ホールだった。
スタート直前。ボミが練習グリーンから1番ティーグラウンドに向かう途中、ファンが花道をつくった。第1打の直後も大声援。「ボミちゃん、ありがとー!」「頑張れー!」。感極まった元賞金女王の頬からは、早くも涙がこぼれ落ちた。
2番パー4の第2打。残り158ヤードからピンそばにつけた。「これが私のアイアンショット」。前日11オーバーの大叩きが嘘のようなスーパーショットだ。タオルやTシャツでイメージカラーのピンクに染まった人の群れ。鮮やかなバーディーに大きく沸いた。前半はイーブンで回ったが、予選通過は絶望的。大雨になってもギャラリーはついてきた。
最終18番。10メートルほどのパットはカップへ。バーディーを思わせる1打に涙を流すファンもいた。パーで締め、両手を挙げて拍手に応えたボミ。最後はとびっきりの笑顔を咲かせた。
「とっても幸せ。今まで楽しかったです!」
外国人アスリートとして、新たな道を切り拓いた選手だった。日本のファンは日本人選手の情報を求めるもの。外国人選手の報道は必然的に少なくなる。ボミは韓国ツアー賞金女王として2011年に日本ツアー参戦。最初は他の海外選手と同じく、“主役”の日本人に立ちはだかるライバルと位置づけられた。
だが、純真無垢な人柄と努力がその定説を覆していった。
日本語はドリルを使って猛勉強。今ではお手本のような平仮名を書く。取材でも通訳をつけず、自らの言葉で想いを伝えられるようになった。本人は決してひけらかすことはないが、みんなが努力に気づいていた。
2015年に7勝、2016年に5勝。正確無比なショット、プレーオフ12戦9勝と土壇場で発揮される強さがファンを惹きつけた。記者に「明日も楽しく回れればいいですね」と投げかけられた時、「ゴルフは楽しめるわけない。そんなものじゃない」と返した言葉が印象深い。「私はゴルフで魅せたい」。それだけ毎日が真剣勝負だった。
強さと人柄にルックスも相まって、アイドル的人気が爆発した。ただ、期待や注目度を簡単に受け止められたわけではない。賞金女王レースを突っ走ったシーズン中。コンビニに入るたびにドキっとした。「毎週毎週、雑誌の表紙が私の顔だった。私はこういう立場の人間になったんだなって」。過熱ぶりに戸惑った。