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「落ちたら骨折する」高さに夢中 19歳森秋彩、小1で初めて登り開花した天性の“クライミング愛”

森秋彩は今も昔もクライミングを心の底から「楽しむ」。自らを追い込むことは決して苦ではないという【写真:積紫乃】
森秋彩は今も昔もクライミングを心の底から「楽しむ」。自らを追い込むことは決して苦ではないという【写真:積紫乃】

人に対してではなく「自分に負けるのが悔しい」

 例えば森の特長の1つに、抜きん出た持久力がある。それを培ったのも、豊富な練習だった。

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「普通は追い込んだり登りこんだりするのって、おっくうというか辛いし本当はやりたくないトレーニングだと思うんですけれど、自分はむしろそれが好きです。自分の限界に挑戦できる、絞り出す感じとか、客観的に自分は今すごく辛いと思っているんだろうな、と感じるのがすごく楽しいですね。みんながプリクラ撮ったり遊んだりしてワクワクするのと同じように、自分で自分を追い込むことが楽しみの1つになっています」

 森は「努力の人」「努力の天才」とも評されることがある。ただ、本人の心持ちは異なる。

「自分は実際は楽しくてやっているのですが、周りから見たらめちゃめちゃ追い込んでいるという風に見えるんじゃないかなって思います。ストイックと言われるけれど、自分は楽しいからやっているだけです」

 それは、森ならではのクライミングとの向き合い方につながっている。それは試合と練習との関係の捉え方だ。

「私は普通のアスリートみたいに、試合を目標に練習する、試合と試合の間の練習、というような区切りはしていないです。クライミングを楽しみたいというのが一番の目的であって、練習、試合に関係なくクライミングそのものを楽しみつつ、その中の通過点として大会があるようなイメージです」

 だから代表に内定したパリ五輪も、森はこう位置付ける。

「オリンピックは、目標というよりもクライミングをする中での通過点の1つという感じです」

 大会を目標に練習するわけではないのは、成績を第一に考えているわけではないことを示唆する。森もそれを肯定し、こう語った。

「昔から負けず嫌いです。負けず嫌いというか、一度始めたことは納得いくまで絶対にあきらめないみたいな粘り強さはあると思います。ただ負けず嫌いと言っても、ちっちゃい頃から、あまり他人を気にしていなかったです。今もそうです。人にじゃなく、自分に負けるのが悔しいですね。だからクライミングでも、本当に人に対して、というのではなく、試合の勝ち負けよりも壁に向き合うことが一番だと思っています」

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松原 孝臣

1967年生まれ。早稲田大学を卒業後、出版社勤務を経てフリーライターに。その後スポーツ総合誌「Number」の編集に10年携わり、再びフリーとなってノンフィクションなど幅広い分野で執筆している。スポーツでは主に五輪競技を中心に追い、夏季は2004年アテネ大会以降、冬季は2002年ソルトレークシティ大会から現地で取材。著書に『高齢者は社会資源だ』(ハリウコミュニケーションズ)、『フライングガールズ―高梨沙羅と女子ジャンプの挑戦―』(文藝春秋)、『メダリストに学ぶ前人未到の結果を出す力』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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