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ラグビー日本代表、W杯直前「1勝5敗」の現実 4年前から1試合平均「10.8得点」減少の要因は?

イタリアの攻撃に見えた学ぶべき点

 26日の試合では、イタリアの攻撃から学ぶべきこともあった。開始6分の先制トライのシーンだ。

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 自陣でのラインアウトを日本がミスしたことでイタリアがボールを持つと、キックで日本陣内へ前進する選択肢もあったが、ホストチームは果敢に攻め続けた。パスの深さ、浅さを使い分けながら、日本の防御をかわして積極的にボールを動かし、最後はSOパオロ・ガルビシが防御の間隙を突いて、SHスティーブン・バーニーのトライに繋げた。この攻防、そして前述の21分のトライに象徴されるように、日本の防御は、常にイタリアのアタックに受け身となり、攻撃を止めるのが精一杯になっていた。本来は日本がW杯でやりたい、ボールを動かすことでゲームの主導権を握るような試合運びを、逆に相手にされてしまっていた。

 最終的には、本番のフランスでどこまでいいパフォーマンスを出せるかにかかっている。だが、W杯プレマッチを終えた時点で、やはり前回大会に比べて様々なものが不十分だという印象は拭えない。

 1つには、冒頭でも触れた時間の問題がある。これは、単純に練習時間があるかないかというだけではない。19年大会の期間中から、次の大会への課題と関係者の誰もが認めていたのは、日本代表の選手層をどう厚くしていけるかだ。その厚みを持たせるためには、新しい力を発掘し、経験を積ませて、代表レベルでも戦える選手に鍛えるための「投資」が不可欠だ。選手を鍛える環境と時間が大きな課題だった。

 以前のコラムでも指摘してきたことだが、日本代表はパンデミックの影響で他国以上に強化に出遅れ、前述したサンウルブズのような強化環境も失っている。2年、3年前の“損失”をまだ引きずっているのかという疑問もあるかもしれない。だが、イタリア戦までの組織プレーの不完全さ、メンバーの習熟度、戦術理解度を見れば、時間不足と感じる面が少なくない。

 結果的に今回のメンバーは2019年大会経験者よりも、それ以降に選ばれた選手が上回った。しかし、21年の活動再開以降は、選手の入れ替わりの新陳代謝も高まった一方で、コロナ前後で“投資”を続けてきた田村優(横浜キヤノンイーグルス)、山沢拓也(埼玉WK)、山中亮平(コベルコ神戸スティーラーズ)らが代表から外れ、その後釜になる選手への投資時間も不十分だった。W杯前哨戦もだが、選手の実戦経験を高め、能力を見定め、プレー時間を伸ばすことに力を注いだことで、チームの組織としての完成度を高めるための時間は不十分だったというのが、ここまでの完成度の不十分さに繋がっているように思える。

 ここからは、技術的、戦術的なテーマからは外れるために是非論はあるだろうが、主将確定をW杯直前の8月15日まで先延ばししたことも、組織を重視する日本代表というチームには影響したのではないだろうか。チームの一体感、リーダーを中心にした組織としての熟成が不十分だったように感じるからだ。

 ラグビーでは主将のキャプテンシーは絶大だ。2015年W杯の南アフリカ戦で、HCの指示を無視してトライを獲りにいったリーチ・マイケル主将(東芝ブレイブルーパス東京)の決断でも明らかなように、ラグビーの主将には重要な決断力が委ねられ、メンバー誰からも、その男の判断なら納得するというカリスマ性も求められる。そのリーダーが、仲間を励まし、叱咤して、時には失敗をしながら組織を作り上げるプロセスを経て、初めてワンチームでありアワチームとなるはずだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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