井上尚弥、かつて記者にも求めた期待を煽る記事 落ちたモチベーションが再び「最強」に戻るまで
ボクシングのWBC&WBO世界スーパーバンタム級(55.3キロ以下)タイトルマッチ12回戦が25日、東京・有明アリーナで行われ、挑戦者の井上尚弥(大橋)が2団体統一王者スティーブン・フルトン(米国)に8回1分14秒TKO勝ちした。世界2人目の4団体統一と4階級制覇の両方を達成。バンタム級ではモチベーションづくりや減量に影響を受けた日々もあったが、全て解放された新階級で凄まじい強さを見せつけた。観衆は1万5000人。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
WBC&WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦
ボクシングのWBC&WBO世界スーパーバンタム級(55.3キロ以下)タイトルマッチ12回戦が25日、東京・有明アリーナで行われ、挑戦者の井上尚弥(大橋)が2団体統一王者スティーブン・フルトン(米国)に8回1分14秒TKO勝ちした。世界2人目の4団体統一と4階級制覇の両方を達成。バンタム級ではモチベーションづくりや減量に影響を受けた日々もあったが、全て解放された新階級で凄まじい強さを見せつけた。観衆は1万5000人。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)
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もう、この世にモンスターを止められるものがない。本当にゼロになった。
至高の技術戦。井上は序盤から猛威を振るい、ペースを握った。「絶対にポイントを取らせない」。短距離走のようにエンジン全開だ。高速ジャブの差し合いを制す。クリンチに逃げる相手と間をつくり、パンチを浴びせた。「フルトンを研究する中で使えると思った」。メイウェザーの代名詞「L字ガード」まで披露し、圧をかけた。
かと思えば中盤はリング中央で足を止める。4回まで全ポイントを奪ったことで、フルトンは前に出なければ逆転できなくなった。攻めさせれば隙ができる。決着へのカウントダウンがスタートした。8回。右ストレートが顎をぶち抜く。倒れかかったところへ、追撃の左フック。「練習を重ねていたパンチ」。無慈悲な一撃が王者を襲い、ダウンをかっさらった。
観客は総立ちの大歓声。再開後もコーナーで猛ラッシュを浴びせて決着だ。酔いしれる客席は「尚弥コール」を絶叫。戦前に警戒した「頭脳戦」でも完勝してみせた。
「自分が思うスーパーバンタム級最強のフルトンを倒すことができた。スーパーバンタム級最強と言えるんじゃないかと思います。階級の壁は感じずに戦えた。しかも、フルトンはこの階級でそこそこ大柄な選手。全然、スーパーバンタム級でやれるなと証明できた」
新階級で縦横無尽に暴れまくった。昨年まではバンタム級で9試合。最強の名を欲しいままにしてきたが、道中ではモチベーションづくりに苦しむ試合があった。
高校卒業後、「強い相手とやる」を条件に大橋ジムに入門。だが、マッチメークは常に思い通りに運ぶことはない。強敵でなければ、練習で120%追い込むのも難しい。「だから、試合前の発言でハードルを上げた。自分へのプレッシャーを高めて強さを引き出しているつもり」。自らを追い込む材料にするため、取材では毎試合のように「期待を超える試合をする」と語気を強めた。
記者に対しても「どんどん書いてください」と期待を煽るような報道を求めた。普通のボクサーなら対戦相手の映像を何度も繰り返し見て研究し、弱点を探って作戦を練る。だが、井上は自分に緊張感を持たせるため、あえて1、2回しか見ない試合も。常人には考えられない“ハンデ”を自らに課した。だが……。