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井上尚弥、強すぎるがゆえの苦悩 「ヒリヒリする技術戦」を求め、4階級目の新領域へ

減量苦以外の階級変更理由「毎回ヒリヒリする技術戦をしたい」

 過去のどんな名選手でも階級を上げれば、KO勝ちが減っていった。階級制のスポーツである限り訪れるもの。バンタム級まで無双を誇ったモンスターの拳も、どこまでも立ち向かえるわけではない。では、これからの井上はどんな試合を見せてくれるのか。

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「しっかり組み立ててボクシングをする。スーパーバンタム級は相手が大きかったり、スタイルが違ったりすることもあるので、変えていく必要もある。それは自分の引き出しからチョイスするだけ。体力勝負の選手にゴリゴリ体力勝負をするつもりはないです。ゴリゴリ打ち合う選手が相手なら打ち合わない」

 階級アップの理由には、約11キロに及ぶ減量が苦しいこともある。一方、バンタム級に相手がいなくなった井上にとって、体格の大きな相手への「挑戦」というモチベーションを手にするためでもある。

「毎回ヒリヒリする技術戦をしたいから階級を上げます。そういう試合なら勝ち方が何であろうと、(ファンは)ワクワクすると思う。昨日みたいな『勝ちは確定。あとはどう倒すか』という試合はやりにくい。ドネア1戦目は自分の片目が見えなかったにしろ、ああいう何があるかわからない試合(12回判定勝ちの死闘)は本人も、見ている人も楽しかったと思う。階級を上げればそういう緊張感が出てくる。ボクシングは組み立てだと思っているので、そこを見てください!(笑)」

 ライト層のファンには倒すか否かがわかりやすいが、見る側の“成長”も求められる。実際、バトラー戦も、1年前に8回TKO勝ちしたアラン・ディパエン戦も、井上はあらゆるボクシング技術を見せてくれた。父・真吾トレーナーも「昨日は11回までにいろんなことをやってくれた。見ている人もいろんな面が見られて楽しかったのでは」と語る。

 来春以降に想定する次戦はバンタム級の可能性も残しながら、井上は「すぐに挑戦できるならしたい」とスーパーバンタム級の世界挑戦を希望する。4階級制覇なら井岡一翔(志成)に次ぐ日本人2人目、2階級で4団体統一すれば世界初の歴史的偉業。ただ、引退時期を「35歳」と公言する井上にとって、記録はモチベーションにはなっても、最終目標ではない。

「自分のゴールは年齢やパフォーマンスの低下(の時期)で考えているので、何階級制覇とか何団体統一がゴール、引退時期とは考えていないです。それまでは全てが通過点になると思う。スーパーバンタム級に上げれば本当に気を抜けない戦いになる。全体的にスリリングな試合になると思います。自分はどこまでも挑戦したい。挑み続けていきたいです」

 持ち上げられないほど重い期待を受けるのは、スーパースターの常。次の領域では、KOとは違うボクシングの魅力を伝えてくれるだろう。とは言っても、また衝撃的なKOを見せてくれそうな気もする。いずれにしても2023年もモンスターのリングに注目だ。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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