創部64年目でなぜ躍進? 大学選手権初出場、東洋大ラグビー部が貫く“凡事徹底”の精神
齋藤主将の転機になった、ある上級生の姿
スキッパーとして「助けてもらってばかり」と語る最上級生の仲間たちだが、入学当時からその結束力は特別だったと齋藤は感じている。
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「メンバー外の連中も含めて、驚くくらい仲がいいですね。1年生の頃から、みんなやる気があってエネルギーがあった。例えば1年生の時は、オフの日とか練習がない午後とかにグループラインで連絡を取り合い、自分たちの代だけで集まってタッチフットボールをやったりしていたんです。上級生たちからは、そんなにやったら練習持たないぞと言われながらも、みんなで楽しんでいた。その気持ちが学年が上がるごとにどんどん強くなってきています。そして最終年に1部でやれるということに喜びも感じて、みんなワクワクしながら日々練習してきました」
そんな結束力のあるチームで、今季主将に任命されたことも前向きに受け止めている。
「キャプテンのオファーを受けた時は面白そうだなと感じました。1部に昇格できましたし、個性豊かなメンバーも集まっていた。プレッシャーもあって大変だなとは思いましたけれど、それ以上にこんなチームでキャプテンをやらせてもらえることが楽しみだなと」
主将として心がけたことは、やはり凡事を徹底することだった。
「グラウンド内外どっちもですね。もちろん練習でも、隙を見せずに、丁寧に、例えばコンタクトの練習でも手を抜かず、しっかりブレークダウンをオーバーする意識を持ってやる。コミュニケーションの取り方も重視してきた。後は私生活でも、寮の掃除当番とかでも自分がただ掃除するだけじゃなくて、他のみんなにもやってもらえるように声をかけてきました。キャプテンになって、まず自分がしっかりやらないとなという意識に変わりました」
転機になったのは、1年生の時の、ある上級生の姿だった。
「2つ上の大内錬さん(現・マツダスカイアクティブズ広島、FB=フルバック)という先輩が、朝食から朝練習までの時間に寮を掃除しているんです。自分1人で自主的にです。最初のうちは独りで掃除しているのを、すげーななんて見ていただけでしたが、部員が少しずつ加わるようになっていった。それを見て、僕も一緒にやるようになったんです。この掃除が直接チームの強化に繋がっているかは、正直分からない。でも、多くの部員が掃除を習慣にしていくなかで、ラグビーでのつまらないミスとかが、どんどん減っていった。僕が1年の最初の頃は、緊張して、パスを取れなかったことも多かったけど、今は少なくなっている。チームも同じで、メンバーが1つの波動の中で、同じエネルギーの中でプレーしているような感覚があります」
福永も、1人の選手から始まった掃除のことは鮮明に覚えている。
「大内が掃除を始めたのは知っていました。毎朝やっているんです。雨が降ろうが、月曜日のオフであろうが。決してそういうことをするようなチームじゃなかったし、独りで掃除を始めるなんて凄いなと本人に話すと、本(凡事徹底)を2度読んで、何か行動を起こそうと決めたそうです。私が就任して本を配ったのは彼が2年生の時でした。そして、彼の行動を見た同級生、後輩たちがぽつぽつと参加してきた。部として決めていた清掃とかは別にあったが、誰かに言われたわけでもなく、誰が見ているわけでもないですからね。あれが転機でしたね。その輪がどんどん広がって、それが今はチームの文化になっています」