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出版社社長でラグビー協会の仕掛け人 異色の指導者が“原石”発掘に情熱を注ぐ理由

仕掛け人が期待する選手同士の相乗効果

 ラグビーというフィールドも、今や世界的にプロ化が進むなかで、コーチングやチーム運営も、飛躍的に客観性、合理性が求められ、ガバナンス強化が進んでいる。鉄拳制裁と根性論の世界は過去の遺産になっている。ゴリも、選手、コーチとして新しい時代を迎えたラグビーを体感し、学んできた。ましてや出版社の家庭に生まれて、慶應ボーイという背景を持つ43歳だ。

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 だが、それでも、その言葉や振る舞いには昭和の匂いがする。人と人が、メールや電話ではなくラグビーのFW(フォワード)戦のように直接触れ合い、摩擦を起こし、濃密な時間を過ごして、ともに泣き、笑うことが、何かの化学変化を起こすことを、ゴリは実証的に知っている。それは、この異色のキャンプ運営だけではなく、菅平に集まった原石たちにも当てはまる。

「選手を見ていると、強豪校で普段は監督や仲間に言われっぱなしの子が、ここでは無名校の子に『こうしたほうがいいぜ』みたいなアドバイスを偉そうにしているんです。で、言われたほうも『〇〇高の奴が俺に声をかけてきた』なんてまんざらでもない顔をしている。これって、双方にとって成長になると思うんです。何か面白い相乗効果が起きそうだというのも、やってみて感じています」

 人と人がデジタルに、合理的に情報交換するだけでは発生しない“何か”が、このキャンプでは生まれている。ゴリ自身が語る相乗効果であり、それは1プラス1が、2ではなく3にも4にもなるという可能性だ。

 7月29日でキャンプは終了した。2泊3日という限られた時間。開講式などを除く実習はわずか4セッション。メンバーたちは山を下り、それぞれのチームに戻っていったが、何人の原石が新たな自分に、そして新たな可能性に目覚めただろうか。

 ビッグマン、ファストマンたちの夏は終わったが、ゴリの夢はまだまだ終わらない。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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