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出版社社長でラグビー協会の仕掛け人 異色の指導者が“原石”発掘に情熱を注ぐ理由

野澤武史TIDマネージャーがラグビー愛と原石発掘への熱い想いを語った【写真:吉田宏】
野澤武史TIDマネージャーがラグビー愛と原石発掘への熱い想いを語った【写真:吉田宏】

強豪大学から声がかからない選手も可能性を秘めている

 参加メンバーのリストを見れば、所属は田無工、夢野台、鷺宮……。全国区のラグビーではなかなか聞かない校名に、大阪桐蔭、佐賀工など花園常連校が交じり合う。その有名校から参加する選手の多くも、チームでは伸び悩んでいたり、これから力をつけていくことが必要な素材が、このキャンプに集まる。花園とは無縁の高校生には高いレベルのスキルやラグビーのナレッジ(知識)を落とし込み、伸び悩む選手はプレーに磨きをかける。

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「もし1学年に70人も選手がいる強豪校なら、埋もれちゃう選手もいるのが現実なんです。例えば、PR(プロップ)なら180センチ・120キロの選手よりも、175センチ・100キロの子のほうが絶対に使えるんです。動けますから。でも、彼らも成長するチャンスを与えたい」(野澤)

 2泊3日のキャンプは、まさにTIDの骨子でもある才能発掘が主眼になる。

 キャンプ地になったのは、菅平の老舗宿のホテルやまびこ。長らく日本代表の強化拠点として使われてきた。ホテルの目の前に広がる芝生のグラウンドは、日本代表に最も近い猛者しか立てないステータスがあった。ある世代以上のラグビー経験者にとっては憧れの宿、そしてグラウンドを、ゴリは敢えて原石たちの強化の場に選んだ。

 その拘りの地での合宿には、経験に裏打ちされたゴリの強い信念がある。

「もし高校からラグビーを始めても、大学でプレーするチャンスがなければ、伸びしろがあるまま終わっちゃうんです。だから、高校3年間で終わりじゃなく、7年計画ができないかと。大学で4年間育ててもらって、リーグワンに行けるか行けないかは選手個々の頑張り次第。でも、そこまでのレールには乗せてあげることができないかと考えて、このキャンプを立ち上げました」

 体は大きいが動きは遅い、パスができない、足は速いが体が小さい――。減点法で評価すれば、なかなか強豪大学からは声がかからないような高校生でも、可能性は秘めている。

 ゴリの2つの仕事が、この思いをさらに強めた。協会ユースコーチとしても経験を積んできた一方で、本業は出版社社長。歴史教科書で有名な山川出版社で陣頭指揮を執る。その営業活動で全国各地の高校を回りながら、日本の隅々で埋もれている小さな輝きを発する原石を何人も見てきた。ユースコーチ、学校への営業という現場で目の当たりにした子供たちに、なんとか光を当ててやりたい。こんな思いが“ビッグマン&ファストマンキャンプ”に繋がった。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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