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“町長”は慶大ラグビー部元主将 仮想空間「丸の内15丁目」が“にわか”の心を掴む理由

2019年W杯に向けて丸ビル内にラグビー神社を作るなど、様々なイベントを通じて魅力を発信した【写真提供:三菱地所】
2019年W杯に向けて丸ビル内にラグビー神社を作るなど、様々なイベントを通じて魅力を発信した【写真提供:三菱地所】

閉塞感を打破したラグビー日本代表の活躍

 W杯開幕へ向けては、丸ビルのイベントスペースなどを使って、ラグビーに関連するアート作品の展示や、関係者を呼んでのトークショー、早稲田大OBの映像制作者、中村裕氏がディレクターを務めたラグビードキュメンタリー映画の制作・上映などを展開。開幕1か月前の8月20日には、丸ビル内にラグビー神社を作るなど、ラグビーと縁のない利用者と楕円球との接点を作り、その魅力を感じさせるようなイベントを発信し続けた。

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 大きなハードルにも苛まれた。圧倒的な課題として横たわっていたのは、一般社会のラグビーへの関心度の低さだった。高田も「ラグビー人気自体が盛り上がってないことが最大のネックだった。何かをやろうとしても全然反応がないのは如実に感じていた」と振り返る。2015年大会で南アフリカから金星を奪うなど注目を集めたラグビーW杯が、オリンピック、サッカーW杯に次ぐ世界3番目の国際大会と言われても、日本での関心度は野球、サッカーに比べれば圧倒的に低かった。15丁目プロジェクトの一員で、高田と同じ慶應で快足ウイング(WTB)として活躍した出雲隆佑も「開幕直前の日本代表の南アフリカ戦(9月6日/熊谷)の時ですら、盛り上がっていないなという感覚があった。これはまずいなと、あの時は思っていた」と回想する。

 だが、その閉塞感を覆したのは日本代表に他ならなかった。空気が一変したのは、ロシアと対戦した9月20日のW杯開幕戦。丸ビルで行われたパブリックビューイングには、過去のイベントでは見られなかったほどの観客が会場スペースから溢れ、桜のジャージーの15人のプレー1つ1つに一喜一憂した。

 高田は当時をこう回想する。

「丸ビル担当としてパブリックビューイングを盛り上げるためにずっと現場にいたんですけど、開幕までうんともすんとも動きがなかった人たちが、開幕戦の時は、これだけ集まるのかという印象でした。ロシア戦、アイルランド戦と、その波が止まないまま、さらにどんどん増えていくような状況が起きていて。すごい異空間のような、丸の内では信じられないくらいの客の入りだし、そのコンテンツがラグビーだというのが信じられなかった。W杯の凄さと、日本代表の影響力を、スタジアムではないところですごく感じていました」

 もちろん、代表の躍進や大会の盛り上がりをサポートするような取り組みも、15丁目では用意してきた。スタジアムやグラウンドを離れて、ラグビーとは縁の薄い丸の内界隈での取り組みのキーになったのが、「にわか」ファンへの発信だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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