“町長”は慶大ラグビー部元主将 仮想空間「丸の内15丁目」が“にわか”の心を掴む理由
慶應義塾大蹴球部(ラグビー部)で、創部100周年のシーズンに大学日本一を果たした高田晋作主将だったが、日本有数のビジネス街である丸の内を企業戦士として駆け回るなかで、不思議な巡り合わせによって再び楕円球と向き合うことになった。その舞台は、大学ラグビーから世界の祭典ラグビーワールドカップ(W杯)へ。2019年日本大会は、グラウンドではなく仮想空間「丸の内15丁目プロジェクト」の中心メンバーとして、大会の成功とラグビーの盛り上げを後押しした。後編では、大学卒業後に入社したNHKを5年で辞め、三菱地所に転職した高田氏が、ビジネスマンとして丸の内15丁目プロジェクトに携わるなかで認識したラグビーの価値、そしてラグビーと共生しながら創る社会の可能性を語ってもらった。(取材・文=吉田 宏)
「丸の内15丁目」高田晋作町長インタビュー後編、新天地で動き始めたプロジェクト
慶應義塾大蹴球部(ラグビー部)で、創部100周年のシーズンに大学日本一を果たした高田晋作主将だったが、日本有数のビジネス街である丸の内を企業戦士として駆け回るなかで、不思議な巡り合わせによって再び楕円球と向き合うことになった。その舞台は、大学ラグビーから世界の祭典ラグビーワールドカップ(W杯)へ。2019年日本大会は、グラウンドではなく仮想空間「丸の内15丁目プロジェクト」の中心メンバーとして、大会の成功とラグビーの盛り上げを後押しした。後編では、大学卒業後に入社したNHKを5年で辞め、三菱地所に転職した高田氏が、ビジネスマンとして丸の内15丁目プロジェクトに携わるなかで認識したラグビーの価値、そしてラグビーと共生しながら創る社会の可能性を語ってもらった。(取材・文=吉田 宏)
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新天地の三菱地所で、ビルの営業管理やベンチャー企業の支援・丸の内でのビジネス展開などに取り組んできた高田に転機が訪れたのは2018年のことだった。翌19年のラグビーW杯日本大会を前に、ラグビー経験者もいる社内でW杯を自分たちでも盛り上げたいという声が挙がっていた。
「実際には2017年の半ばくらいからザワザワ動き始めていました。W杯日本大会前に、スーパーラグビーに日本から参戦したサンウルブズのスポンサーをやろうと有志で動き始めました。さらには、W杯もまだ取り組めるチャンスがあるらしいぞという情報も聞こえてきたんです」
多くの企業やラグビー好きの会社員なら、自分たちのお楽しみ程度の、一時的な盛り上がりだけで終わっていただろう。しかし高田ら三菱地所の有志は、もう一歩踏み込んだアクションを起こす。
「社内には新規事業の制度がありましたが、最初は『なんでラグビーなの?』『これって事業なの?』という声があった。落としどころがなかなか見つからない時期があったんです。新しい取り組みなので、枠組みというか、会社のどこの部署で、どう実現させるの、みたいなことです」
自分たちのビジネスと、日本で開催される世界最高峰のラグビーイベントをどうにか結び付けたいという思いを巡らせるなかで、事業とも接点を持てる取り組みを模索し、少しずつイメージを作り上げていった。
「最初は単純にラグビーのイベントをやればいいのかなくらいに思っていたんです。でも、それだけではあまり世の中には伝わらないだろうなと思うようになってきた。なんで三菱地所がやっているんだというところと、W杯へ向けた機運醸成をする上で、しっかりと多くの人たちの意向を取り込めるプラットフォームや枠組みを作らないと、なかなか上手くいかないだろうと話し合うなかで出てきたアイデアが15丁目でした。ただイベントをやっても、三菱地所の本業である街作りに引っ掛けないと、なんで三菱地所がやっているんだということになる。ちょっとW杯にかすって終わるなという話はしていましたね。外部も含めて、みんなが乗っかりたい、楽しいと思える枠組みをしっかり作れたことが、すごく大事なことだったのかなと思います」