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日本男子フィギュアはなぜ強い? アジア人の体格は4回転に有利、採点方式変更も後押し

日本人が飛躍したきっかけは公平で明確な採点方式の採用

 特にプログラム全体のことを考えると、フリースケーティングで7本のジャンプを揃える安定性や、演技面でもっと体力を使うためには、パワーを消費する跳び方よりも、軽やかで無駄な力のないジャンプが求められるようになったのだ。

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 かくして高橋大輔や宇野昌磨、さらには鍵山優真といった身長160センチ台の男子がトップに残るようになり、唯一170センチを超える羽生結弦も細い身体を維持し続けている。また4回転アクセルに挑んでいる羽生は、昨季の終わりから今季にかけて、筋肉量を減らさずに3キロ減量したという。

 日本のライバルとなるネイサン・チェンやヴィンセント・ジョウ(北京五輪はコロナウイルス陽性判定のため欠場)は、ともに中国系アメリカ人で、やはり小柄なタイプ。アジア系の小柄または細い身体の選手が、トップに君臨するようになってきた。

 これはフィギュアスケートだけに限ることではなく、体操の内村航平も162センチ、スノーボードハーフパイプの平野歩夢は165センチと、やはり空中で回転系のトップ選手は体格が小さい傾向が強まっている。

 さらに、採点方法の変化も日本人にチャンスをもたらした。欧州発祥のスポーツであるフィギュアスケートは、芸術面の評価でアジア人は長いこと苦戦してきた。1908年のロンドン五輪から2010年バンクーバー五輪までの102年間、男子の金メダリストは、欧州16名、米国7名。アジア人の王者は現れなかった。

 日本人が飛躍する大きなきっかけになったのは、2005-06シーズンから正式採用された現在の採点方式だ。2002年ソルトレークシティ五輪のペアでジャッジの不正が発覚し、公平で明確な採点システムとして採用されたもの。評価の内訳が分からなかった「6.0点満点制」から、一つひとつのジャンプやスピンごとに基礎点を決める加点方式になった。これまでは曖昧だった芸術点も、「スケーティング技術」「要素のつなぎ」「演技」「構成」「音楽解釈」と5項目に分かれ、その基準も明記された。

 この採点方式は、日本人のように「緻密に努力」する人間にとってプラスに働いた。少しでも得点の高いジャンプの組み合わせを計算し、苦手なジャンプを克服して種類を増やし、そして反復練習で安定性を高めていく。スピンは、国際スケート連盟・技術役員の資格を持つ日本人が、シーズン初めにチェックをしてレベル4を狙う。また2005年のNHK杯では、ステップで世界初のレベル4を高橋が獲得した。

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野口 美惠

元毎日新聞記者のスポーツライター。冬季五輪は2010年バンクーバー大会から現地取材。自身のフィギュアスケート経験をもとに技術面を丁寧に描写した記事に定評がある。スポーツ専門誌などに幅広く寄稿。著書に『伊藤みどり トリプルアクセルの先へ』(主婦の友社)、『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)など。

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