渋野日向子と戦った高3佐藤心結 「最後の弟子にしよう」三觜喜一コーチとの9年物語
プロテスト免除を逃した夜に切り替え「負けたことに意味」
終わったことをいつまでも嘆かない。佐藤も、そのマインドを持っていた。スタンレーレディスを終えた後、すぐに2日後のプロテスト2次予選に気持ちを切り替え、4日間で通算イーブンパー。4位で最終プロテストに進出した。
【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら
佐藤「優勝を逃して悔しかったのですが、夜には『逆に負けたことに意味がある』と思えました。翌日には、テスト会場のコースを練習で回って、ラウンドが続きましたが、疲れは全く感じませんでした」
だが、2週間後の最終プロテストでは不安にさいなまれた。第3日を終えて通算3オーバーで8位。合格圏内にはいたが、ドライバーショットが乱れ、飛距離も大幅に落ちていた。
佐藤「3日目に急に飛ばなくなりました。220ヤード、良くても240ヤードといった感じで……。自分で何を試してもダメでした」
終了後、他の選手に本調子ではない打撃練習を見られることが嫌で、夕食後、コースから車で約1時間の練習場へと向かった。三觜コーチは当日の午後6時過ぎに現地入り。急いで駆け付けた。
三觜コーチ「もう、練習は終わっているだろうと思っていましたが、『これからです』と言うので、すぐに行きました。そして、アドレスを見た瞬間、『心結、どうした? それ、ジャミラだよ』と言いました」
ジャミラとはウルトラマンに登場する怪獣で、頭の真横から腕が伸びている。つまり、三觜コーチは「両肩が上がっている」ことを誇張して表現し、「体に力が入らないアドレスになっている」と指摘したのだ。
佐藤「ジャミラは知りませんでした(笑)が、『ハッ』としました。自分では気づかなかったことを一瞬で指摘してくださり、修正したらすぐに飛距離が戻りました」
佐藤の不安は一気に解消。最終日は71で回り、4位で念願の合格を果たした。続く1次QTを12位で通過、最終QTでは11位に入って、来季ツアー前半戦の出場権を手にした。
佐藤「最終QTもコーチにキャディーをしてもらって、不安なくラウンドできました。次にお願いするのは、(来季ツアー開幕戦の)ダイキンオーキッドです。以前から『プロデビュー戦はお願いします』と伝えてありましたので」
ダイキンオーキッドでは、日本女子プロゴルフ協会の樋口久子特別顧問との再会も楽しみにしている。スタンレーレディスで渋野に敗れた後、「ナイスショットがピンに当たったりで、惜しかったわね。これは『プロテストに合格して、戻ってきなさい』ということよ。頑張って」と声を掛けられたからだ。
佐藤「お会いできたら、『合格して戻って来ました』とご報告したいです。今、思えばスタンレーレディスで勝たなかったことで、プロテストとQTを経験して、私は強くなれたと思います。苦しくも大きな2か月でした」