トップリーグとはどう違う? 明らかになったラグビー新リーグ「リーグワン」の全容
ホスト&ビジター制での普及拡大を狙う
ディビジョン1の競技方法は、参加12チームが6チーム2組に分かれるカンファレンス制を導入する。同組内でホーム&アウェー(リーグワンではホスト&ビジターと呼ぶ)の総当たり2回戦、そして別組のチームと交流戦1試合ずつを行い、各チーム16試合の勝ち点で順位を争う。このホスト&ビジター制は、企業スポーツとして地域ベースで運営されてこなかったTLでは馴染むのが難しかったが、新リーグ参入条件としたことで、ようやく実現した。新リーグ、ラグビー協会では、チームを媒介にした普及面での成長を期待しているはずだ。
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TL最終シーズンも導入されていたプレーオフは採用せず、リーグ戦での成績トップが王者になる。プレーオフの不採用には反論も聞こえる。興行、メディア露出面で考えれば、注目度が高まるプレーオフでの優勝争いは優良商品だからだ。だが、様々なフォーマットで行われてきたこれまでのTLを取材した経験から思うのは、もし、そのリーグ戦自体が本当に質の高い、厳しい戦いであれば、日程終了時点でトップに立ったチームが勝者として称えられるべきだという考え方だ。
プレーオフトーナメントの中の1つの勝敗で優勝が左右されるのではなく、長く、過酷なリーグをトップで乗り越えたことを尊重するフォーマットを、新リーグは選んだ。理想を言えば、参戦する12チーム全てがディビジョン1を戦うのにふさわしい実力をつけて臨むことが重要だ。実力に見合わないチームにより、消化試合のようなゲームが発生すれば、それがリーグ自体の価値を下げることにも繋がるだろう。
ディビジョン2、3については、6チームが総当たり2回戦を行い、その後リーグ戦上位、下位3チームずつに分かれて総当たり1回戦を戦い最終順位が決まる。ディビジョン1同様にすべて勝ち点制で行われ、入替戦には各ディビジョンから成績上下位3チームが進むことになる。
新リーグの準備段階では、ディビジョン間の昇降格にも、事業性などの参入条件をどこまで達成できているかが審議される可能性も語られてきたが、24チームが概ね条件をクリアしていることも踏まえて、「フェーズ1」と定められる22年からの3シーズンに関しては勝敗以外の条件は設けず、入替戦での成績に基づいた実力本位で昇降格が争われるという説明があった。
新リーグの大会フォーマットについては、3つの狙いが説明されている。
1.高質で均衡した試合の醸成
2.ホスト&ビジター形式の実施
3.一定期間固定化されたわかりやすいフォーマット
各ディビジョンのチーム数の割り振り(12-6-6)が1であり、より多くの実力が均衡したゲームをファンに提供しようという狙いがある。果たして12というチーム数が妥当かは、実は議論がある数字で、チーム関係者の中には高質な試合をするなら10チームが適当という意見もある。
2に関しては、先にも述べたようにTLでは実現できなかったホーム&アウエー方式の採用に反映されているが、参入チームがどこまで地域を巻き込んだ活動、展開が出来るかという、グラウンドを離れた活動を注視し、期待していきたい。
そして3については、毎シーズン、呆れるほど大会方式を変えてきたTLの大きな反省材料でもある。試合日程と大会方式は、W杯や日本代表の活動に大きく影響されてきた一面もある。リーグワンでは、先にも触れたように「フェーズ」という考え方を導入して、3、4シーズンを一区切りにして大会フォーマットを見直していくことになる。フェーズ1が来年からの3シーズン(22-24年)、フェーズ2がその後の4シーズン(25-28年)、フェーズ3も4シーズン(29-32年)と定めている。このフェーズごとにフォーマットを検証、修整していくことになる。
このような複数年を1単位としたフェーズからは、新リーグ自体が、かなり急ぎ足で開幕を迎えることも感じさせる。リーグとチーム双方の運営自体に、まだ不確定、未整備な要素があるのは明らかだ。例えば、新リーグ側が強く打ち出したホスト制も、多くのチームがホストスタジアムの確定に苦戦を強いられている。ホストエリアの選定についても、呼称に「東京」が含まれるチームが、ディビジョン1の12チームの中で5チームもあるのが果たして適正だろうか。
各チームの練習グラウンドが従来どおり企業の敷地内にあることで都市部に集中するため、首都圏をホストタウンに定めるチームは12チームの中で8チームと一局集中の状態だ。地域性を重視する新リーグ構想の中で、ホストスタジアム、エリア問題は、今後に課題を残すことになる。リーグ側が、すでにホストエリアの最終確定はフェーズ1終了までの猶予を与えていることを考えても、開幕からの3シーズンが“見切り発車”と受け止められてもおかしくない。