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“死の組”に入ったラグビー日本代表 日本大会超えへ、熟練記者が見た本当の可能性

なぜ“死の組”が生まれたのか?

 ここでW杯抽選会のシステムを説明しておこう。20か国が出場するW杯で、1次リーグに相当するA、B、C、Dの4プールに実力が均等になるようにチームを振り分けるために“バンド制”というシステムが導入されている。20チームを、実力順に4チームずつバンド1から5に分け、同じバンドのチームが抽選により4つのプールそれぞれに振り分けられる。今回のバンド分けは、コロナ感染の影響もあり今年1月時点に遡った世界ランキングに基づいたものだ。日本の場合は8位扱いでバンド2に振り分けられ、バンド1のイングランド、バンド3のアルゼンチンとの対戦が決まった。

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 問題はアルゼンチンだ。振り分けられたバンド3のチームは、スコットランド、フィジー、イタリア。それぞれ強豪と言われる国だが、最近10年のスパンで見るとアルゼンチンはこのバンドでは群を抜いた実績を持つ。それが、日本と同じプールに振り分けられたことになる。

 このような困難な組み合わせの伏線は、2017年に行われた19年日本大会の抽選会にある。この抽選でイングランド、フランス、アルゼンチンというベスト8常連国が同じプールに入ることが確定。本大会でアルゼンチンがフランスに21-23と惜敗して決勝トーナメント進出を逃したために、実力よりもはるかに低いバンド3に入ったことが、2023年の日本の“災難”に繋がっているのだ。そして、アルゼンチンがイングランド、フランスと同プールになったのは、実は2015年大会のイングランドのプール戦敗退が背景にあるという皮肉な事実もある。

 厳しい対戦相手に加えて、このコロナ禍も日本代表の強化に大きな影を落としている。今年の3月から多くの国でラグビーも中止される中で、日本代表も6、7月のウェールズ、イングランド戦、11月のスコットランド、アイルランド戦が中止となり、いまだに活動も休止状態が続いている。それに対して、アルゼンチン代表はラグビー・チャンピオンシップで11月から実戦を再開してニュージーランド、オーストラリアと2試合ずつを行い、イングランドも10月に今春に中断されていた6か国対抗の1試合、11月からは新設されたオータムンネイションズカップで4試合を行い初代王者にも輝いている。来年2月からは再び6か国対抗が開催されるなど、実戦を伴う強化を再開させている。

 日本が代表戦を再開させるのは、来年6月26日にスコットランド・エディンバラで行われる全英・アイルランド連合軍のライオンズ戦。日本代表の藤井雄一郎テクニカルディレクター(TD)は「ライオンズ戦に伴い、もう1試合を行いたい」と、事前に別の国際試合を調整していることを明かしているが、5月23日のトップリーグ決勝が終わるまでは本格的な代表強化が難しいのが実情だ。

 加えて日本代表の強化にマイナスファクターとなるのが、サンウルブズのスーパーラグビー撤退だ。サンウルブズの代表強化への貢献は、いままでも多く触れてきたのでここでは割愛するが、ジョセフHCも「サンウルブズは勝敗では結果は出せなかったが、代表選手強化には大きく寄与した。同等のものが、2023年への準備に必要なのは確かだ。SRに似たもの、同等な大会、試合機会が絶対に必要だと思います。TLだけでは十分じゃない」と断言している。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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