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本拠地どうする?日本代表との協力は? ラグビー新リーグ会見に感じた懸念と違和感

代表への選手の供出が昇降格の要件に…

 協会・代表とチームの対立については、むしろ当たり前と捉えるべきだろう。新リーグ構想でもチーム側が興行権を持つことを認めているが、収益性が高まればチーム、リーグの運営サイドにとっては、有望選手つまり入場チケットを売れる選手が試合でプレーすることが重要になる。そのような選手は当然代表でも能力、人気の両面で欠かせない存在であり、代表戦でのプレー時間は長くなるだろう。ここでチームと代表との“綱引き”が起きる可能性がでてくる。どちらが正しいという問題ではなく、このようなリーグと代表の対立は自然の摂理のようなもので、どの競技にも存在する。

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 もう1点、踏まえておかなければならなのは、現在のTL、そして新リーグ発足時点での参画チームの大半はプロではなく、あくまでも一企業のクラブ活動だということだ。つまり収益を求められる組織ではなく、福利厚生活動(社員がスポーツで健康を維持する)や広報活動(チームの活躍で社名が広まる)と位置付けられているのだ。なので、イングランドやフランスのように、所属選手が代表に召集されることがチームの利益を損なうという問題には至らないのが、いまの日本のシステムなのだ。

 だが、谷口室長が「運営はプロになっていただくということで(中略)、事業機能をきっちり持って頂く」と説明するように、新リーグが従来よりもプロに傾いた形態になり、将来的にプロ化していくのなら、チームと代表・協会の関係も変化していくことは避けられない。プロ化が進めば、チームは当然ながら勝利と収益という避けることができない目標と向き合うことになる。この段階で、いまは“くすぶっている“状態の代表チームへの選手派遣が問題として浮上する可能性がある。

 会見では、新リーグの日程を代表活動に影響のない時期にしたいという方針も示された。この考え方は歓迎するべきだが、チームにどう代表への協力を求めるかという下記の説明を聞くと、より慎重に検討する必要性を感じざるを得ない。

「代表に積極的に選手を出しているかということを(ディビジョン昇降格の)審査の要件にスコアとして入れようと思っています。ですので、積極的に貢献されたチームは、毎年選考委員会を設けますので、それによりディビジョンが変わることにもなるので、やはり代表選手を出すことはチームにとってはポイントを稼げることもお見せすることにしようかと思っています」

 まず、新リーグのディビジョン制を説明しておこう。現在の構想ではリーグの一部、二部などに相当するディビジョンを3まで用意している。ディビジョン1、2は新リーグの参画要件を満たしているチーム、ディビジョン3には参画要件の一部に賛同できない、または要件をすべて達成できないチームが所属するという。

 そして、ディビジョン3から2への進出はもちろんだが、2から1への昇格も審査委員会なるものの審査が必要になるという。

 現在策定中のその審査は、各チームの成績などがポイント化されて判断されるというのだが、このポイントに「代表チームへの貢献」という項目も検討されているという。選手を積極的に代表の活動に参加させればポイントが高く、消極的ならポイントは低くなる。チーム側が選手を代表に行かせないという事態は多くはないが必ず起きることであり、その事情は様々だ。もちろん、状況に応じて柔軟な“採点”がなされることも考えられるが、ポイント制による画一的な評価が昇降格に影響するのであれば、勝者が利を得て敗者が失うというスポーツの持つ根本的な前提が崩れることになる。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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