ラグビー日本代表も箱根駅伝出場校も活用 広がるスポーツのGPSデータで何が分かるのか
他人とではなく、過去の自分とデータを比較し「自分の成長度合い」を知る
現在、最新テクノロジーのスポーツへの活用を積極的に進めているのが、前出の神武直彦教授が所属する慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科だ。
同研究科はジュニア世代の運動能力向上というテーマに積極的に取り組み、慶應義塾大学蹴球部(ラグビー部)のグラウンドを拠点とした小学生スポーツ教室「慶應キッズパフォーマンスアカデミー(慶應KPAhttps://www.kpa.sdm.keio.ac.jp/)」や、横浜市港北区、横浜市立日吉台小学校と連携した「スマートスポーツプロジェクト」を主催。GPSデバイスやドローンを活用したスポーツプログラムを提供し、最先端のテクノロジーを子どもたちの運動能力向上につなげることを目指している。
神武教授もまた、GPSデバイスの導入によって具体的なデータを数字で示せることのメリットを語る。
「例えば小学生だと、同学年でも早生まれの子どもはほかの子に比べて運動能力が低い傾向があります。例えば同じ小学1年生でも、4月生まれと翌年の3月生まれではほぼ1年違うわけです。その影響で、ほかの子よりかけっこが遅い、ボールをうまく扱えない、というように、スポーツに苦手意識を持ってしまうケースが、少なからずあります。GPSデバイスは、そういった問題を解決できる可能性を持っているのです。
子どもたちがどう進化しているのか。なぜ進化できたのか。分析結果を可視化し、具体的なデータの伸びを示す。それにより、子どもたちは自分自身の成長度合いや達成度合いを他人との比較ではなく、過去の自分との比較で知ることができる。その結果、行動変容が生まれ、スポーツは得意ではないと思っていた子どもが思いのほか伸びる。そんなケースがこれまでもありました。
また指導者も、これまでは主観やほかの子どもと比較した相対評価で一人ひとりの運動能力を見てきました。でもこういったテクノロジーの導入により、データを見ることでこれまで分からなかった意外な成長を発見できるケースがあるそうです。子どもたちのスポーツへの取り組み方が少しずつ変わっていくことが、子どもたちのコミュニケーション能力やリーダーシップの向上につながっていく面があると考えています」