ラグビー日本代表も箱根駅伝出場校も活用 広がるスポーツのGPSデータで何が分かるのか
経験や感覚を裏付けする客観データで説得力のある指導に
GPSデータを活用することで「本番で能力を発揮できるスポーツ選手」を育てることは、果たして可能なのか。そして実際にデータを取ることで、選手たちのパフォーマンスやチーム運営には、どのような変化がもたらされるのか。
現在、ユーフォリア社でスポーツサイエンティストを務める佐々木優一氏は、ラグビーのトヨタ自動車ヴェルブリッツのRehab S&Cコーチとして、GPSデータを活用し選手たちのリハビリテーションとストレングス向上をサポートしていたことがある。佐々木氏は自らの経験からこう語る。
佐々木「チームでは毎回の練習における総走行距離を決めており、私の役割は選手たちの走行距離や負荷を数値でチェックすること。パソコンをグラウンドに持ち込み、『あの選手は今、どんな状態ですか?』『走れてないね』『ちょっと身体が重そうだね』というように、インカムを使ってコーチ陣とコミュニケーションを取りながら、上限を超えそうになったらトレーニングを抑えるよう進言していました。
また、負傷した選手のリハビリも担当しました。競技復帰までのプロセスのひとつに『Return to Run』という『どれだけ走れるようになったか』を見る指標があり、それに沿って競技復帰へのリハビリを進めるのです。ポジションごとに目標数値が細かく設定されているので、リハビリで取得したデータをもとに選手とディスカッションを重ねながら、復帰プランを練っていました」
佐々木氏は、GPSデバイスから取得できる膨大な量のデータから何を見て、選手のコンディションを判断していたのだろうか。
佐々木「コンディション管理の指標として多く見られているデータは走行距離やスプリント回数、加速減速の頻度、心拍数などでした。もちろんこれらは、目で見てもある程度は把握できますが、GPSデバイスから得たデータを見れば『この選手は長い距離をよく走っている』といった主観的判断を『この選手は地点Aから地点Bまでを、時速○kmで走っている』というような、客観的なデータに落とし込むことができるのです。
これは非常に大きなことだと思います。今まで指導者たちが経験や感覚で見てきたことが数値化され、競技特性への理解と、練習内容の見直しが進みました。さらにデータに基づいて選手の疲労度合いをマネジメントできるようになり、傷害の可能性は大幅に減ったと思います」