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妻の言葉で「ハッと気づいた」 中央大・駅伝監督が“怒らない”指導に変えた5年目の決断

約40名の部員に寄り添いながら自らの経験や考えを伝えている【写真:中央大学陸上競技部】
約40名の部員に寄り添いながら自らの経験や考えを伝えている【写真:中央大学陸上競技部】

スカウト時に重視する不本意なレース後の選手の行動

 就任4年目から5年目にかけては、藤原監督が自らの目でスカウティングしてきた学生によって、完全にチームが入れ替わった時期でもあった。藤原監督の想いや考えに共感してくれた選手が揃ったことで、あれこれ言わずに済むようになったのも大きかったのだろう。寄り添う指導によってチームの雰囲気を変え、着実に競技力も高まっていったなかで、中央大のスカウティングは最近かなり好調のようだ。

――スカウティングの際の基準はあるのですか。

「まずは、高校生の5000メートルランキングを参考にしています。タイム順に100番ぐらいまでにいる子は何かしらの大会に出ているので、その映像をチェックします。そこでこれから伸びるかどうか、フォームなどのチェックをします。あとはやはり高校の学力等も判断材料にはなり得ますね。

 一番大事なのは実際に対面する際、ちゃんと目を見て話をする、質問に対してどういう返しをしてくるのかという反応です。あと、ダメだった時のレース後の行動ですね。良い時はガッツポーズをしたり、握手をしたりしますが、ダメな時に過剰に落ち込んでいたり、シューズを投げたりするのは論外。理想は悔しがりつつ、さっと着替えて長いダウンをして内省し、次に切り替えられている選手がいいですね」

――タイムが良い選手、即戦力が中心になりますか。

「即戦力ばかりでもいけないと思います。チーム作りとして即戦力は毎年3名ぐらいで、伸びしろがある子を数人。もしかしたら伸びないかもしれないけど、性格がいいとか、一芸に秀でているなどで数人。今年はこんな世代にしていこうと考えてスカウティングしています」

――学生のなかには進路について迷う子もいると思います。そういう子たちには、どういう声をかけているのでしょうか。

「特に決めセリフみたいのはないんです。高校生には『自分が行きたい、ここだったら頑張れるというところに行ってほしい。それがうちだったら嬉しいし、うちでやってほしい』と伝えます。あとは、僕は世界選手権止まりですが、山本亮コーチはロンドン五輪(マラソン男子代表)に出場していますし、アメリカに合宿参加するとか、世界を身近に感じられる指導や環境を与えられることや、スポーツ推薦としてのサポートの話もします。でも、今の子たちは、それだけで決めていなくて、もっと重視しているものがあると思います」

――それは、どういうものなのでしょうか。

「SNSです。どんなチームか、練習の様子とか、選手の雰囲気とか、チームにいる選手がどういうことを言っているのかとか、そういうことのほうが指導者の言葉よりも大学を選ぶ際は大事な気がします(笑)。今はそういう時代ですし、自分自身がその大学に入った時をイメージできやすいのではないでしょうか」

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藤原 正和

中央大 陸上競技部 駅伝監督 
1981年生まれ、兵庫県出身。現役時代は中央大の中心選手として箱根駅伝などで活躍。2001年ユニバーシアード北京大会の男子ハーフマラソンで金メダルを獲得した。03年のびわ湖毎日マラソンでは日本人トップの3位入賞、2時間08分12秒のタイムは初マラソン日本最高記録とマラソン日本学生最高記録となっている。卒業後はホンダに入社。世界陸上の男子マラソンに2度出場するなどの実績を残し、16年に現役を引退すると中央大の駅伝監督に就任した。同年の箱根駅伝出場を逃すなど苦しい時も過ごしたが、着実にチームを強化。今年度は3大駅伝にフル参戦し、出雲駅伝3位、全日本大学駅伝7位の成績を引っ提げて箱根路に挑む。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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