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「鬼鬼メニュー」の言葉が独り歩き 一山麻緒を育てた名将、妥協なき指導の原点とは

永山コーチが追い求める「選手の笑顔」

 永山コーチが目指すゴールは、どういうものになるのだろうか。

「私は、監督とかコーチ業は仕事だと割り切っています。選手が、例えば五輪に出てメダルを獲るのが夢だと言うなら、私も同じ夢を見させてもらいたい。そのために努力していくだけですので、自分のゴールとかはないんです」

 では、指導者としてのやりがいは、どういうところに感じているのだろうか。

「選手の笑顔ですね。自分と一緒に苦しみながら練習をして、準備してきたなかで最高の笑顔でゴールする。それが一番です」

 福士、一山を日本トップクラスの選手に育てたが、育成には終わりがない。永山コーチも新たな場所での指導に意欲を燃やす。

「本当は東京五輪が終わった時、ワコールは定年でしたので、もう現場から離れてもいいかなと思っていたんです。でも、福士くんの引退と一山くんが東京に来ることと私の定年が重なって、今回資生堂という新しいチームにお世話になることが決まりました。私は、どちらかというと拾ってもらった身なので、なんとしても結果を出して恩返しをしたい。五輪に5回行っていますけど、すべて失敗しているので、1回は成功したい。その舞台がパリだと思っています」

【第1回】福士加代子、一山麻緒を輝かせた「裏方の経験」 五輪に5度導いた名将が貫くこだわり

【第2回】福士加代子から「学ばせてもらった」 五輪で4度“共闘”の恩師、感謝とともに抱く悔い

【第3回】結婚が「大きな転機になった」 一山麻緒のコーチが見た変化、“3食自炊”の姿に感服

(佐藤 俊 / Shun Sato)

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永山 忠幸

資生堂ランニングクラブ 専任コーチ 
1959年生まれ、熊本県出身。東京農業大時代に4年連続で箱根駅伝に出場。2000年にワコールの監督に就任すると、福士加代子の才能を見出し、長距離走とマラソンで2004年から4大会連続で五輪出場に導いた。東京五輪の女子マラソン8位入賞の一山麻緒も指導し、今年4月に揃って資生堂へ移籍。専任コーチとして、24年パリ五輪出場を目指している。

佐藤 俊

1963年生まれ。青山学院大学経営学部を卒業後、出版社勤務を経て1993年にフリーランスとして独立。W杯や五輪を現地取材するなどサッカーを中心に追いながら、大学駅伝などの陸上競技や卓球、伝統芸能まで幅広く執筆する。『箱根0区を駆ける者たち』(幻冬舎)、『学ぶ人 宮本恒靖』(文藝春秋)、『越境フットボーラー』(角川書店)、『箱根奪取』(集英社)など著書多数。2019年からは自ら本格的にマラソンを始め、記録更新を追い求めている。

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