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我が子の「厳しい指導者」を務める親へ 三宅宏実が“喧嘩と尊重”で築いた親子関係

ウエイトリフティングで五輪2大会連続メダル獲得の三宅宏実(いちご)が、「THE ANSWER」の取材に応じ、スポーツ指導における「親子の在り方」について語った。

三宅宏実がスポーツ指導における「親子の在り方」について語った【写真:Getty Images】
三宅宏実がスポーツ指導における「親子の在り方」について語った【写真:Getty Images】

親は子どものスポーツ指導にどこまで干渉すべきか、重量挙げ五輪メダリストの言葉

 ウエイトリフティングで五輪2大会連続メダル獲得の三宅宏実(いちご)が、「THE ANSWER」の取材に応じ、スポーツ指導における「親子の在り方」について語った。

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 子どもをプロに育てたい、五輪に出場させたい、自分が叶えられなかった夢をこの子に……。愛情は大切なもの。しかし、行き過ぎてしまっていることはないだろうか。「厳しくしないと強くならない」と躍起になり、未だに昭和の根性論を押し付ける親の存在も耳にする。地域の少年団や部活などで別の指導者に預けても、やり方に納得がいかず過度に口を出してしまうという話も少なくない。

 三宅は15歳で競技生活をスタート。以来20年間、1968年メキシコシティ五輪銅メダルの父・義行さんの指導を受け、2012年ロンドン五輪で銀メダル、16年リオ五輪で銅メダルに輝いた。親が指導者の子どもにとって、どんな形が適切なのか。東京五輪が迫る中、三宅親子が二人三脚で育んだ親子の距離感について聞いた。

◇ ◇ ◇

 親は子どものスポーツ指導にどこまで干渉すべきなのだろうか。35歳の三宅は、競技生活20年にわたり、父と絶妙な距離感を築いてきた。熱量が合わないことはなかったのか。義行氏の指導をこう振り返った。

「決して押しつけられないですね。私の性格を理解し、この競技の大変さを知っているからこそ共有できることがあります。本人を凄く尊重してくれるのが一番大きい。タイミングよく言葉をかけるのがうまいですし、それで救われることがありました。迷った時には『こういう選択肢があるよ』と視野を広げてくれます。気持ちよくコントロールしてくれたのが今日にも影響している。私は五輪に4回行きましたが、レールに上手く乗せてもらったんじゃないかなと思います」

 操られてきたが、子を縛る糸は存在しない。褒められて伸びるタイプ。指導の中で何度も怒られてきたものの、娘の性格を熟知する父に褒めて伸ばしてもらった。高校時代は「他に考える隙を与えないくらい練習を仕込まれた」と笑うが、年を重ねるごとに“自分で選択する機会”を多く与えられた。練習メニューを作られても、どうこなすかは「あなた次第」というスタンスだ。

「自分で決めないと最後まで責任を持てない。『やるのはあなただよ』といつも言われます。あくまでメニューはあるけど、それをどう調理するかはあなた次第で変わる。だからこそ『考えてやりなさいよ』と」

 アスリートでも、一般社会でも、成長するために必要な自発的な向上心。三宅がこれを手にしたのは、競技人生のスタート地点だった。バーベルを握り始めたのは、中学3年の途中。進路を考え始めた頃に「何か人と違う人生を歩んでみたい」という思いが芽生えた。この夏に胸を打たれたのは、シドニー五輪で輝くウエイトリフティングの選手たち。2人の兄も取り組んでいた一番身近な競技の世界に飛び込む道を選んだ。

 しかし、父がすぐに徹底的な指導をしてくれたわけではない。娘の自立を待つ時間があった。基本的な練習を教わりながらも「本人が本当にやりたいかどうか」をずっと見られていた。期間は3か月ほど。もともと飽き性だった娘の意志は強く、変わることはなかった。本当に挑戦したいという気持ちを伝えた時、父から2つの条件を出された。

「五輪でメダルを獲ること」「途中で逃げ出さないこと」

 覚悟を試された。「わかりました。お願いします」。二人三脚が組まれた瞬間だ。「この競技の厳しさを父が知っていたので、押しつけられると最後まで続けられないとわかっているから、本人がやるかどうかをずっと見られていました」。実家の台所が練習場となり、父のマンツーマン指導を受ける日々が始まった。

 決して「押しつけ」ではなく、14、15歳の少女が自ら進路を選んだ上で厳しい練習と向き合った。

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