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「『心技体』は足し算にあらず」の真意は? 相撲・齋藤一雄が高校生に伝えたかったこと

「心技体」は足し算にあらずの真意は?

 続いて授業は、質疑応答のコーナーへ。「技術」「メンタル」「進路」の3テーマから、高校生たちが直接、齋藤さんに質問をした。

――自分より10キロも軽い相手にも負けてしまいます。相手とぶつかった際、技をかけられないようにするには?

「相撲の基本は押しです。相撲には『押さば押せ、引かば押せ。押しは相撲の極意なり』という格言があります。柔道ですと、『押さば引け、引かば押せ』といって、相手の動きに自分の動きを合わせなさい、となりますが、相撲では、相手がどんな動きであろうと、どんどん押せ、となります。押せないと、いくら投げが得意でも通用しません。(逆に)ある程度押せるようになれば、まわしを取るような選択もあるし、いろんな技にいってもいい。押せなければ何も始まらない。相撲は、攻撃が最大の防御です。

 また、10キロ、軽い選手に持ってかれるということは、恐らく体の使い方が相手のほうが上手です。四股、鉄砲、すり足、ぶつかり稽古で(体の使い方を)しっかり学んでほしいと。重心を上げず、相手に力を伝える技術を覚えてください」

――気持ちを強く持つには?

「これは非常に大きなテーマです。『心技体』という言葉がありますが、私の考え方ですと、心技体は足し算でなくて、最初にくる心が掛け算で影響します。どういうことか? 心がゼロだと全部ゼロになる。それだけ心の充実が大切です。

 過去大相撲で何十連勝と勝ちを重ねていた力士が何人かいますが、彼らは一回負けると連敗したり、1回は勝っても次にまた負けたりする。数学でいう確率が通用しない。それだけメンタルが重要なのです。気持ちを強く持つためは、どれだけそれをやりたいか、どれだけその目標を勝ち取りたいか、どれだけ努力したかです。

 どんな力士も、みんな勝ちたい。大きな大会の決勝戦でも、技術よりもどれだけ勝ちたいかの気持ちが勝敗を左右すると思います」

――今、稽古でもなかなか勝てなくてしんどい。相撲人生でいちばんつらかった経験は?

「私がいちばんつらかったのは、中学1年生のときでしょうか。明大付中野という中高一貫教育の学校だったので、(相撲部は)1年生から6年生までいたような感じでした。中1と高3では大人と子どもぐらい違います。会話も出来ず、今と違って厳しい時代だったので、毎日毎日、本当に大変でした。で、何が大変でしたか? と聞かれると、具体的には覚えていないんですね(笑)。

 以前、登山家の方に、『何故、高い山に登るのですか?』と聞いたら、景色が素晴らしいとか気分がいいとか思われるがそうではない。一緒に登った仲間と、辛かった経験を共有するのが、いちばんの楽しみだ、とおっしゃっていました。

 私も中・高時代の仲間と会うと『あのとき大変だったなぁ』『あの先輩はいやだったなぁ』という話ばかりで優勝した話なんて全然、出ません。つらかった話は、自分の財産になるんです。頑張ってください」

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長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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