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4回転時代に坂本花織が獲った五輪メダルの価値 鈴木明子「世界のスケーターの希望に」

4回転や3回転アクセル抜きで戦ったことは「世界のスケーターにとっても希望に」と語った【写真:松橋晶子】
4回転や3回転アクセル抜きで戦ったことは「世界のスケーターにとっても希望に」と語った【写真:松橋晶子】

日本だけじゃない五輪メダルの価値「世界のスケーターにとっても希望に」

 日本の女子フィギュアにおいて、4人目の五輪メダル。その意味を考えてみると、本当に大きな価値があります。

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 高難度のジャンプを跳ばなければ通用しないと言われる時代。3回転アクセルや4回転という大きな武器はなかった坂本選手のメダルは、それに対抗するスピード、スケーティング、ジャンプの質を極めれば世界と戦える、ということの証明と言えます。

 その証拠に、採点上の「スケーティングスキル」の項目が9.46点でROC勢も上回り、全選手で1位になったこと。持ち前の圧倒的なスピードをジャンプ、ターンに生かして演技に流れを生む。もちろん、ジャンプも素晴らしいのですが、それだけではなく、滑りのスピード、技のつなぎなど、そういう点も含めた総合的な技術を争うスポーツがフィギュアスケートであると、坂本選手が証明してくれました。

 メダルの影響は、日本ばかりではありません。「4回転を跳ばなければ、メダルは無理」などと大会前からそんな言葉を見聞きしましたが、そんな価値観も覆した。10代後半になると体型変化が起こり、高難度のジャンプも跳びにくくなる。それに伴い、トップ層の低年齢化が進み、息の長い選手が出てこないと言われている。世界のスケーターにとっても、本当に希望となる坂本選手の演技でした。

 樋口選手も初出場で5位入賞。SP、フリーともに素晴らしい3回転アクセルを決めてくれました。この五輪の舞台で決めることができた経験は、団体戦の銅メダルとともに、彼女のこれからのキャリアにといても間違いなく大きな武器になります。

 一方で、3回転アクセルはもちろん、表現力も彼女も持ち味。SP、フリーともに本当に心に残るスケートを見せてくれた。音楽を表現する身のこなしは素晴らしい。3回転アクセルと表現力という2つの武器を生かしたプログラムをこれから楽しみにしています。

 同じく初出場の河辺選手は果敢に3回転アクセルに挑戦してくれました。中国入り後の練習を見ていても3回転アクセルを含め、ジャンプが安定しない場面が多かった。それでも、SP、フリーともに守らずにチャレンジしたことは今後にこれは必ず繋がるもの。

 代表は河辺選手自身が実力で掴んだものであり、この経験も自身で勝ち取ったもの。今は望んだような結果ではなく、五輪がつらい想いになっているかもしれませんが、チャレンジした自分に誇りを持って、これからも挑み続けてほしいと思います。

 そして、ROCのシェルバコワ選手とトルソワ選手が金メダル、銀メダルを獲得しました。

 4回転ジャンプを複数組み込んだ構成のレベルの高さは言わずもがな。シェルバコワ選手は冒頭の2つの4回転で加点が3.46点と3.70点という質の高さ。さらに繊細に音楽を表現できる芸術性を持ち合わせているのが、彼女の強さです。

 トルソワ選手も4回転5本を跳び、最高難度の構成を五輪で当たり前にやる。練習を見ていても全てを完璧に決めることはそれほど多くなかった。それでも絶対に組み込んでくる姿勢に、彼女は本当にファイターであると感じました。

 過去に出場した大会では男子のスコアを上回ったこともあり、彼女たちの凄さは男子顔負けと言われれば、まさにその通りです。

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鈴木 明子

THE ANSWERスペシャリスト プロフィギュアスケーター

1985年3月28日生まれ。愛知県出身。6歳からスケートを始め、00年に15歳で初出場した全日本選手権で4位に入り、脚光を浴びる。東北福祉大入学後に摂食障害を患い、03-04年シーズンは休養。翌シーズンに復帰後は09年全日本選手権2位となり、24歳で初の表彰台。10年バンクーバー五輪8位入賞。以降、12年世界選手権3位、13年全日本選手権優勝などの実績を残し、14年ソチ五輪で2大会連続8位入賞。同年の世界選手権を最後に29歳で現役引退した。現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、全国で講演活動も行う。

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