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突然、躍った「美女ボクサー」の見出しに戸惑い 高校生でプロになった女子ボクサー稼業の裏側――ボクシング・鈴木なな子

鈴木は退路を断ってアジア王者を目指している【写真:松橋晶子】
鈴木は退路を断ってアジア王者を目指している【写真:松橋晶子】

ラストチャンスで成就した「大学生のうちにチャンピオンベルト」

 2021年12月9日。ボクシングの聖地、後楽園ホール。

 日本ミニマム級2位の鈴木が挑んだのは、同1位の瀬川紗代。かつて同じワタナベジムでともに汗を流した同門で、アマチュアのキャリアが豊富な相手に対し、接近戦の打ち合いで被弾しながら引くことなく、手数を出してプレッシャーをかけ続けた。

 6ラウンドを戦い抜き、もつれ込んだ判定は2-1。僅差勝ち。「大学生のうちに、何かのベルトを獲ることが目標でした。『ああ、間に合った』と。大学4年生でギリギリだったので」。学生ラストチャンスで巻いたチャンピオンベルトは格別だった。

 以降、2022年8月に一村更紗戦(後楽園)に6回判定勝ちで初防衛。その後、アジア王座を目指してベルトを返上し、チャンスを待っている。社会人として仕事をしながら競技をする道もあったが、大学卒業の際に就職活動はせず。キックボクシングジムのアルバイトのみでボクシングに向き合う。

「就職したら、時間が取れない。父は慎重派なので『大丈夫?』って心配しましたけど(笑)。結構マルチタスクができない人間なので。もし駄目だったら、そのまま(引退して)会社員になればいいやっていう逃げ道にもなっちゃうと思ったから」

 強い覚悟を持って挑んでいるプロボクサー稼業。

 切っても切り離せないのが、減量だ。試合前1か月で鈴木は6キロ落とす。女子選手特有の月経もコンディショニングに影響するという。

(後編へ続く)

■鈴木なな子 / Nanako Suzuki

 1999年7月8日生まれ。東京・板橋区出身。4歳からフルコンタクト空手を始め、成立学園高(東京)2年で全関東大会女子軽量級優勝。その後、課題だったパンチを鍛えるため高校1年から始めていたボクシングに転向した。ワタナベボクシングジムに入門し、半年でプロテストに合格。高校3年の2017年5月、児玉このみにデビュー戦判定勝ち。立大進学後、3年生だった2020年に三迫ボクシングジムに移籍。4年生となった2021年12月、通算8戦目で瀬川紗代を判定で破り、日本ミニマム級王座を獲得。2022年8月に初防衛を果たし、9月にアジア王者を目指して王座返上した。通算9戦7勝(1KO)2敗。身長157センチ、リーチ160センチ。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)


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