現役中に子宮内膜症「復帰できても競技は…」 選手として室伏由佳が悩んだ手術の決断
一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)は9月6日、「女性アスリートのためのシンポジウム『生理とスポーツ』」を開催。UNIVAS加盟大学である順天堂大さくらキャンパス(千葉)にて、対面・オンラインのハイブリット形式で行われた。

UNIVAS「女性アスリートのためのシンポジウム『生理とスポーツ』」室伏由佳インタビュー後編
一般社団法人大学スポーツ協会(UNIVAS)は9月6日、「女性アスリートのためのシンポジウム『生理とスポーツ』」を開催。UNIVAS加盟大学である順天堂大さくらキャンパス(千葉)にて、対面・オンラインのハイブリット形式で行われた。
本当にしんどかった重い生理痛 婦人科医に相談、服用し始めたピルが私には合った――サッカー・仲田歩夢選手【私とカラダ】
このシンポジウムの実現に向けて、企画立案から舵をとったのは、順天堂大健康スポーツ科学部准教授であり、元ハンマー投げ女子日本代表の、室伏由佳さんだ。
室伏さんは、中学時代に陸上競技をスタート。しかし、初潮を迎えると後に貧血症状や生理前の不調や月経随伴症状に悩み、大学入学時の健康診断では、重度の貧血と診断された。
それでも、円盤投げで好成績を残し、中京大学時代はインカレで4連覇を達成。卒業後は、社会人アスリートとして、ミズノ株式会社に入社。トラッククラブ在籍し、父や兄と同じく、ハンマー投にも取り組むようになる。
ところが2003年5月、翌年のアテネ五輪出場を視野に入れ、トレーニングを続けるなか、室伏さんは突然、下腹部と臀部付近に歩けないほどの激しい痛みを感じた。
病院での検査の結果、子宮内膜に子宮頚部に栓をするような形で成長したポリープが見つかり、月経困難症を診断された。ポリープの摘出は簡易的であったものの、いったんは躊躇。最終的にアテネ五輪選考会を3か月後に控え、ポリープを掻破する処置に踏み切った。
「ポリープを切除した後は、問題から解放されたと思っていたのですが、時期を同じくして月経前の不調が増悪しました。婦人科に通っていたことから、当時の主治医と相談し、大会と生理が重ならないよう、中用量ピルを用いて月経周期移動を試みることにしました。
当時、日本ではアスリートに限らず一般的にも、月経周期移動を試みた症例はほとんどない時代です。大会に生理が当たらないように月経周期の移動はできたとしても、その副作用から体調不良に陥り、悪心や吐き気、むかつき、浮腫みなどの症状が生じて悪コンディションに。体が思うように動かず、練習もはかどらず不安もありました」
中用量ピルは、長期的な月経のコントロールとして用いられる低用量ピルよりも副作用が重くなりやすく、短期的な周期移動よりも、長期的にコントロールする方がコンデイショニングへの影響を軽減できる。
また、当時は低用量ピルや超低用量ピルなどはなかったことから、室伏さんは短期的な月経周期移動の手段しか知らなかったという。
それでも、2004年6月に行われた五輪選考会の日本選手権では月経の影響を回避でき、自己記録で初優勝。室伏さんは目標だった五輪出場を勝ち取り、その後すぐに念願の日本記録も樹立した。
しかし、五輪の予選当日に生理が直撃することがわかり、本番の4週間前に再び中用量ピルを服用し、月経周期移動を試みた。悪コンディションの最中ではあったが、最終調整のために出場した大会で、今も残るハンマー投げの日本記録(67m77)を再び更新した。