競泳界の名将も「絶対大切」と賛同 日本の女性コーチ育成に「競技横断ネットワークを」
女性エリートコーチ育成、競泳・平井伯昌氏も「絶対大切」と賛同
井本「そういった文化は、本当に変えていかなければなりませんね。今後、女性エリートコーチ育成プログラムを、どういう方向性で進めていくのでしょうか」
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伊藤「一番はやはり、競技連盟の関与を促すことだと思います。今回、2年間のプログラムをやってきて感じるのは、競技団体がどれだけ本気になれるかどうか。各競技団体の方と話をすると、個々の認識では女性コーチの育成の大切さを感じてはいるけれど、協会として大切だと考えているかどうかにはクエスチョンマークがつくと感じるんですね。女性コーチの能力が上がったとしても、実際に活用していくには、まだまだ障壁があると感じています。
強化部門のトップの人が、女性コーチを増やすことが本当に必要だと考えている競技団体は、すごくうまく物事が動きますし、いろんな場面で支援もしてくださいます。一方、そうでない競技団体とは、やりとりをするだけでも結構、苦労をしています。我々が特に競技団体のトップの方々とのコミュニケーションを取らないことには、とても難しい」
井本「日本の競技団体レベルで、女性エリートコーチ育成を支援する動きはあるのでしょうか」
伊藤「東京五輪で競泳日本代表ヘッドコーチを務められた平井(伯昌)さんにお話をしたら、『絶対大切だよね』と賛同してくださり、今回、僕らのプログラムに競泳の女性コーチを2人、送り込んでくれています。それから東京パラのボッチャ日本代表監督の村上(光輝)監督もすごく積極的で、今回、2人推薦してくださった。この2競技が熱心ですね。
我々は今後、各競技団体のなかにキーパーソンとなる仲間を増やし、競技横断的なネットワークを作っていくことが必要だと考えています。僕は今回、JPCの強化本部員になったので、競技団体の枠を越えてパラの女性コーチを増やすための対話をしていきたいと考えています」
井本「私もそういった競技横断的なスポーツ界全体のネットワーク作り、戦略作りはすごく重要だと考えています。女性コーチ育成でもそう、女性理事を増やすことでもそう。キーパーソンや競技団体が孤立しないよう、ネットワークで推し進めていかないとダメだと思うんです」
伊藤「そこは今、絶対にやらなければいけないところですね」
井本「日本オリンピック委員会(JOC)、日本スポーツ協会(JSPO)との関係はどうでしょうか」
伊藤「JOCとはナショナルコーチアカデミー(アスリートを育成・指導するワールドクラスのコーチ及びスタッフの養成を目的としたJOCの事業)などのプログラムとの連携が、非常に重要だと考えます。僕たちの女性エリートコーチ育成プログラムが、例えばナショナルコーチアカデミーのプログラムのどこに位置するのか、どう関係するのかを、きちんと示していかなくてはいけません。
JSPOの方は、2年間の女性エリートコーチ育成プログラムを終了すると、競技別指導者資格コーチ3(JOCナショナルコーチアカデミー受講の推薦条件に該当)の資格が取れる体制が整いました。このように、うまく連携させていくことも今後の課題の一つです」
井本「私は常々、スポーツ界にジェンダー平等のための基本的な、そして大きなフレームワークがなくてはならないと思っています。そこに、女性指導者のこと、女性理事のこと、ライフサイクルにおける女性の競技環境のこと、アンコンシャスバイアスの解消などをすべて入れ込み、戦略を作り、組織横断的に進めていく。
現在、スポーツ基本計画やヘルシンキ宣言はありますが、ジェンダー平等に関する政策やプロジェクトはバラバラにあって、繋がっていないばかりか、女性の問題として、一つのコーナーに固められがちですよね。もっとガバナンスの多様性推進として、最重要政策として進められるべきだと思うんです」