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小学生の従妹に「男と女どっちなの?」と聞かれ トランスジェンダーの大学院生が伝えた言葉

対談した須永美歌子先生(左)と山田さん【写真:編集部】
対談した須永美歌子先生(左)と山田さん【写真:編集部】

30歳から性転換の治療を進めていく山田さん

須永「それは、私との関係性が崩れるかもしれない、というような不安から?」

山田「そうですね。理解してくださると思ってはいましたが、ジェンダーに対する考え方については、まったく議論をしてこなかったので不安はありました。また、26歳にして初めて、誰かにきちんと話す機会を設けたことでもドキドキしました」

須永「今の研究をスタートすることがきっかけで、話をしてくれましたね。私は山田さんの話を聞いてまず考えたのは職場環境です。過去に、外出先で女子トイレに入るのがいやで、校内でもトイレに行くのを我慢していたFtMの知人がいたんですね。だから、校内の環境の改善点があれば教えてほしい、という話を真っ先にしました」

山田「私は『女性の体であること』を比較的受け入れていたほうだったので、高校や大学の環境面で特に不自由を感じたことはなかったですね。感じ方は本当に個人差がありますが、私は性自認と異なる体に対して、否定的な感情を持ったり、強い苦しみを抱いたりすることがほとんどありませんでした。でもそれは、家族はもちろん、同級生や部活の仲間から、偏見をぶつけられることも特別扱いされることもなく、大人になったことの影響も大きかったと思います」

須永「現在、山田さんは戸籍のうえでは女性です。大学も女性として籍を置いていますが、これから性転換の治療を進めていくと伺いました」

山田「はい、そうです。私は今、30歳ですが、性転換の治療を始めるのは遅いほうだと思います」

須永「治療をスタートするまでにも、段階がたくさんあるんですよね」

山田「はい。まず、カウンセリングや染色体検査、婦人科系の疾患がないかなど様々な診察、検査を行います。その結果、基準を満たすと『性同一性障害』――残念ながら、今はまだ『障害』と言われてしまうのですが――と診断されます。そこで初めて、ホルモン治療を開始できたり、乳腺、子宮と卵巣を摘出するという性別適合手術を受けられたりができるようになります。そのうえで、戸籍の変更ができます」

須永「日本では必ず性別適合手術を受けないと戸籍変更はできないんですね。先ほど山田さんは、周囲のFtMのコミュニティのなかでは、ホルモン治療を受けるタイミングが遅いと言いました。私の知る限りでも、『自分に生理があることをどうしても受け入れられない』と、大学在学中からホルモン治療を始める方もいます」

山田「いつ治療を始めるかは本当に、人それぞれの考え方や環境により異なります。私は『女性の体であること』を比較的、受け入れて生きてきたので、『一刻も早く性転換のための治療を始めたい』という気持ちはありませんでした。また、大学卒業後も企業などに就職するのではなく、院生として大学に残ったため、学生時代から自分を取り巻く環境が大きく変化しなかったことも関係しています。

 何より先に治療を始めた同級生や後輩たちから、『人それぞれだから、慌てず自分にとってのいいタイミングで始めたほうがいいよ』と言われたことが大きいです。彼ら曰く、『外見は今以上、男性的になれる。だけど、変わるのはそれだけだよ』と。経験者が言うのであれば、慌てる必要はないと考えました」

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須永 美歌子

日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)、『1から学ぶスポーツ生理学』(ナップ)

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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