スタンフォード大、イェール大など 海外トップアスリートが一流大学を進路に選べる理由
競泳の元五輪代表選手で、引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として発展途上国の平和構築・教育支援に従事し、昨年から一般社団法人「SDGs in Sports」代表としてスポーツ界の多様性やSDGs推進の活動をしている井本直歩子さんの「スポーツとジェンダー」をテーマとした「THE ANSWER」の対談連載。毎回、スポーツ界のリーダー、選手、指導者、専門家らを迎え、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第4回のゲストは世界中で会計監査やコンサルティングなどを手掛ける大手グローバル・プロフェッショナルファームEYの関連会社であるEY Japanの佐々木・ジャネルさん。女性アスリートのキャリア・トランジションやリーダーシップについて全3回で議論する。今回は中編。(取材・構成=長島 恭子)
連載第4回「競泳アトランタ五輪代表・井本直歩子×EY Japanの佐々木・ジャネル」中編
競泳の元五輪代表選手で、引退後は国連児童基金(ユニセフ)の職員として発展途上国の平和構築・教育支援に従事し、昨年から一般社団法人「SDGs in Sports」代表としてスポーツ界の多様性やSDGs推進の活動をしている井本直歩子さんの「スポーツとジェンダー」をテーマとした「THE ANSWER」の対談連載。毎回、スポーツ界のリーダー、選手、指導者、専門家らを迎え、様々な視点で“これまで”と“これから”を語る。第4回のゲストは世界中で会計監査やコンサルティングなどを手掛ける大手グローバル・プロフェッショナルファームEYの関連会社であるEY Japanの佐々木・ジャネルさん。女性アスリートのキャリア・トランジションやリーダーシップについて全3回で議論する。今回は中編。(取材・構成=長島 恭子)
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井本「ジャネルさんは、長年、海外の女性アスリートのキャリア・トランジションやビジネス界への進出例を見てこられました。キャリア・トランジションに関し、アメリカなどの他国と日本の女性アスリートを比べると、一般的にどんな傾向があると思いますか」
佐々木「海外のアスリートは、とても早くからキャリアに対するマインドセットを持っていますよね。競技を続けながらも、進路についてや、引退後どんなことをしたいのかの考えを持っているアスリートが多いと思います。
もちろん、日本にもそういったアスリートはいると思いますが、割合は少ない印象があります。ただ、若い世代は変わりつつあるのではないでしょうか? WABNアカデミー(※)の1期生10名のうち、現役選手は5名ですが、5人とも将来について非常によく考えていますよ」
※EYが創設した競技引退後の女性アスリートの、ビジネス界への挑戦やキャリア・トランジッションを支援するプログラム『女性アスリートビジネスネットワーク(Women Athletes Business Network=WABN)』の日本版。
井本「私は現役時代、留学先としてアメリカの大学を選ぶ際、いくつかの水泳が強い大学に見学に行ったんですが、スタンフォード大などの一流大学は、すでにアメリカ人のトップスイマーで枠が埋まっていました。驚いたのは、五輪のメダリストのようなトップの選手たちが、高校の学業成績で一流大学に行けるようなスコアを持っていたことです」
佐々木「その通りです。アメリカではかなり早い年齢から、キャリアに関する考え方が植え付けられていますし、ロールモデルもたくさんいる。アスリートたちはその傾向にどんどん追従しています。私は13年間、体操選手でしたが、アメリカで育ったので、当たり前にスポーツ以外のことも多く学びたかったため大学に進学することを決めていました」
井本「日本のアスリートは、競技第一で進学先を選択する人が多いかも知れませんね。アメリカなどでは競技も学業も両方追う選手が多い気がします」
佐々木「例えば、フィギュアスケーターで22年北京冬季五輪金メダリストのネイサン・チェン選手も、名門イェール大学の学生です。彼は『競技の他に考えることができ、リラックスできる。そのことは、競技にも好影響を及ぼしている』と語っています。
井本「彼は五輪前に大学を休学したようですね。それはスノーボードのクロエ・キム選手も同じ。名門プリンストン大を五輪前から休学しています。トレーニングとのバランスを取りながら、レベルが高く、卒業が難しい大学に敢えて挑戦していますよね。また、北京五輪で金2つ、銀1つを獲得したフリースキーヤーのアイリーン・グー(谷愛凌)選手も、9月からスタンフォード大に進学することが決まっています」
佐々木「そうですね。一流大学に行くことがすべてとは思いませんが、日本のアスリートは欧米のアスリートと比較すると、引退後のキャリアに関する野望のレベルが、随分と違っていると感じます」