「月経は来ない方がいい」という風潮 女子選手は“女性”を捨てなければ勝てないのか
2人が願う女性とスポーツの未来「スポーツをすることが当たり前に」
――最後に、スポーツはどんな文化に育ち、どんな未来になってほしいと願っていますか。
【特集】「タブーなしで考える女性アスリートのニューノーマル」 THE ANSWER的「国際女性ウィーク」特設サイトはこちら
江夏「スポーツをすることが当たり前になってほしいです。私は『女の子がスポーツに打ち込むなんて』と言われたギリギリの世代かも。同世代はそろそろ更年期にさしかかり、『検診でコレステロールが高いと言われた。運動しろと言われたけど、何をしたらいいだろう?』という人も多い。そうではなく、日々の生活のなかで当たり前にスポーツがあってほしいです。仕事や子育てで忙しくてスポーツから離れた時期があっても、昔やっていたスポーツなら戻りやすい」
伊藤「女性の中にはスポーツをしたことないという人もいます。うちの母も運動したくないと言っていました。でも、スポーツというものが広まっていけば、女性の体のコンディションにフォーカスすることにもつながっていくと思います」
江夏「それにスポーツをやっていたことは生活の支えになります。私は当直しながらしんどいとき、午前0時を越えると『100メートル自由形の50メートルのターンを終わった。もう半分終わった』、3時を過ぎると、『ラスト!あともうちょっと頑張ろう、終わらないレースはない』なんて思いながら仕事をしていました。
何か打ち込んだこと、頑張ったこと。速かろうが遅かろうが『自己ベスト』でいい。自分にとってのベストを目指して頑張った経験が社会人になって生きてくる、そんなスポーツであってほしい。だから、『こんなことになるなら、スポーツなんかやるんじゃなかった』と後になって思う人を産婦人科医の立場から一人でも減らしたいです」
――そういう部分が日本スポーツの強化につながっていくと思います。
伊藤「すべては母体。スポーツをする人が多くないと、強くならないですから。産む、産まないという少子化の問題もあるけど、スポーツをやっていた人間としてはスポーツをやる人間を増やしていきたい。先日、国連のユニセフのイベントに行きました。難民の人も多くの民族が混在しています。そこで民族間の問題も多くあるようです。ユニセフは何をしたかというと、スポーツをしたといいます。スポーツの役割を見直して競技力を向上するだけじゃなく、平和、人生を豊かにすること。そういうスポーツが広まればいいなと思います」
(終わり)
(THE ANSWER編集部)